ホークスの160キロ左腕がブレイクか。工藤監督の金言で制球難を克服 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 投手がコントロールに苦しむとき、ボールが抜けるか、引っ掛けてしまうかの2パターンに分類されるが、首脳陣はとくに前者を嫌う傾向にある。球が抜けるということは体の開きが早い証拠でもある。いい投球フォームが身についていないというバロメーターになるからだ。

 3年やって一人前と呼んでもらえるのがプロ野球の世界だ。言い換えれば、3年間でひと区切りと考えることもできる。

「3年間で自分の課題がまったく克服できませんでした」

 危機感は募るばかり。古谷にとってのコントロールは、課題というより悩みだった。

「160キロ。あれは幻です」

 誇るべき数字とあえて距離を置いてみたこともあった。ただ速いだけでは意味がないのなら、スピードを抑えてでも制球重視で投げるべきなのではないかと考えた時期もあった。

 古谷は迷った。人生に迷った時、人間はだれかの助けが必要になる。出会いというものは誰にでも訪れるチャンスがある。あとは、その目の前の機会をつかむか、逃すかは本人次第だ。

 古谷を救ってくれたのはホークスの首脳陣だった。

「昨年の秋のキャンプで倉野(信次/ファーム投手統括)コーチに『147キロでフォアボールを出すオマエに魅力はあるのか。思いっきり腕を振って155キロでフォアボールなら相手も嫌がる。フォアボールを出しても失点しなければいいじゃないか』と言われたんです。僕のなかでラクになったというか、その言葉で開き直ることができました」

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る