オコエ瑠偉の心に響いた浅村栄斗の助言。「もう迷わないっす!」 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 技術、知識、経験が豊富なプロだからこそ、時に思いきりのよさが失われる。オコエもまた、そんな自分を認識するように、浅村からのアドバイスを体にしみ込ませた。

「本当にそうだなって思うんです。年々、相手からの攻めが厳しくなっていくなかで、自分は考えすぎてバットが振れなくなったり、振ったとしても力んだり、変なスイングになったり......。結果的に、ピッチャーのクセがわからないと振れないようになっていた部分があって。でも、ヒデさんの言うとおりなんですよ。どれだけ技術的な練習をしても、その形で振れないと意味がないので」

 そう一気に言葉をつないでから、オコエはフッと息を吸い、声を張った。

「自分、もう迷わないっすから!」

 その話を聞いた直後の10月、オコエは有言実行を果たした。

 ソフトバンクとのクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージ初戦。オコエはソフトバンクの絶対的エースである千賀滉大から本塁打を放って見せた。見逃せばボールの高めストレートを迷いなく振り抜いた。

「千賀さんクラスのピッチャーは割り切っていくしかないでしょう。迷いはなかった。ストレートだったら振ろうと思ってスイングしました」

 浅村からのアドバイスを忠実に実践した一発だった。もちろん、その姿勢は今年も変わらない。

 レギュラー獲りを目指すオコエだが、外野手争いは熾烈を極めている。1億円プレーヤーとなった島内宏明をはじめ、2018年の新人王・田中和基、昨年のドラフト1位・辰己涼介など、ポジションを勝ち取るのは容易ではない。

 それでもオコエに迷いはない。その決意をグラウンドで示す時がくる。

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