2019.11.28

カープ伝説のエース・外木場義郎が
明かした「完全試合」達成の心境

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


 自分では実感がなかった外木場さんも、実際に受けている捕手から「いいぞ」と言われ、ついその気になった。6回は三者連続三振、7回は投ゴロ、三ゴロ、左飛。このあたりで完封以上、記録がかかっていることは頭にあった。いい当たりは5回、松原誠の左飛ぐらいだった。ベンチは静かになり、捕手の田中もあまり話をしなくなった。そのなかで投げている当人が記録達成を意識したとしたら、8回の頭だろうか。

「9回、9回の頭ですよ。意識というより、これはいけそうだな、よし、っていう気持ちになって、狙ってみようと。もう完全に狙いに行きました。力が入りましたよ。だから最後、3人とも三振取れたと思うんです」

 9回の大洋は代打の中塚政幸、同じく代打の江尻亮、そして山田忠男。このなかで中塚はセーフティバントの構えをしたという。

「ちょっとそんな格好してましたけど、もうっ、やられたらしょうがない、とは思いました。ただ、代打で出てくる人は私のボールに目が慣れてないとしても、緩い球だと変化してもついてくる可能性がある。だったら速い球で押せ、というのが鉄則なんです、はっきり言えば。だから、9回はほとんど真っすぐでした。三振取ったボールもみんな真っすぐでしたから」

 結果、16奪三振というセ・リーグタイ記録も作ってのパーフェクトゲーム。これほど完璧な形での達成はほかにない。

(後編につづく)

取材当時の外木場さん。まるで銀行員のような印象だった

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