秋山翔吾「書かれると困る」を解禁。
打率を急上昇させた打撃理論 (3ページ目)
「得点圏でプレッシャーになっているのではなく、今、クイックに間に合わない打ち方なんですよ、たぶん。ワインドアップには間が取れて、コンタクトするまでの準備をできるけど、クイックだと肩や手首の力の入り方が、スイングスピードを加速させる時にロスを生んでいる可能性がある。ひじやグリップを抜いて、パッとヘッドを出せればいいですよ。でも、今の自分だと、それができない」
相手投手がワインドアップやセットポジションでゆっくり足を上げる場合、ボールとコンタクトするまでに準備の時間が長くなるから、対応することができる。しかし、相手投手がクイックになると、準備の時間が削られ、思うようにボールに力を加えられない。数字で言うと、ワインドアップなら「80%×80%」の力を生み出せていたのが、クイックだと「80%×30%」に下がるような理屈だ。
打ちまくった5月から6月になり、秋山は月間打率を落とした一方、得点圏打率を大きく上げた。だからこそ、「書くな」と言われた話を書いている。
5月に打率4割を残した頃、秋山は自身の課題に気づいていた。そこでヒット数を重ねられるようになると、アプローチを変えた。簡潔に言うと、クイックに対応するために、少し小さく振るようなイメージにした。
「ピッチャーが投げてからボールが来るまでの1秒ちょっとの間に、自分が振る間合いをどう作れるか。ワインドアップでゆっくり足を上げた150kmの球には対応できても、クイックの130kmの球に対応できないとダメなわけです。打ち方を1打席ずつ変えられればいいけど、身体にどうしても癖づくものなので。それが簡単にできるなら、もっと打てていると思うし。その時期に、どっちを優先的にやる必要があるのか、ということですね」
6月29日のオリックス戦で、秋山は連続フルイニング出場を単独4位の668試合に伸ばした。出続けるだけでなく、216本のシーズン安打記録を樹立した2015年以降、毎年リーグトップレベルのヒット数を積み重ねている。継続的に結果を残せるのは、現状に満足せず、常にトライし続けているからだ。6月29日、秋山はこう話した。
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