2018.10.19

最下位・阪神に見た唯一の光。
大山悠輔は「真の4番」となりえるか

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第30回

 今シーズン、17年ぶりに最下位となり、金本知憲監督も辞任するなど、暗いニュースが多かった阪神。そんななか大器の片鱗をのぞかせたのが大山悠輔だ。9月16日のDeNA戦で3本塁打を含む6打数6安打の猛打ぶりは、阪神ファンならずとも強く印象に残ったに違いない。果たして、大山は本当にブレイクしたのか。名コーチとして多くの一流打者を育てた伊勢孝夫氏の見方はこうだ。

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9月は22試合で9本塁打を放つなど、大活躍を見せた2年目の大山悠輔 今シーズン、巨人の岡本和真は打率.309、33本塁打、100打点というすばらしい成績を残した。一方の大山も、シーズン後半は岡本をしのぐほどのバッティングを見せていた。具体的に言えば、ボールをとらえてスイングする精度の高さとスピード。ヒットになる、ならないは別として、そこだけにスポットを当てれば、大山の方がいい時期もあった。

 以前はこだわっていたのか、それともチーム方針なのかわからないが、無理な右打ちが目についた。右打ち自体は決して悪いことではないのだが、無理して右に打とうとするあまり窮屈なバッティングになってしまい、フォームを崩すことがある。

 悪い時の大山のバッティングを詳しく説明すると、課題は"左腰の緩み"にあった。内角を意識するあまり、早く左腰が緩んでしまう(開いてしまう)。だからトップの位置が保てない。自分では「とらえた」と思った打球が全部ファウルになる。今シーズン序盤はそんなスイングをしていた。

 ところが、夏以降の大山はまるで別人だった。ややアウトステップ気味だったものをスクエアに固め直したところ、壁ができた。つまり、体の開きがなくなったのだ。

 大山の魅力は、なんと言っても構えたところからバットがシャープに下りてくることだ。我々は「引っ張ってくる」という表現を使うのだが、大山はその引っ張りがじつにいい。高い位置のトップからスーッと下ろせているから、インコース、アウトコース問わず、スムーズにバットが出る。

 もともとボールをとらえてからのフォローの大きさに特長があった打者だったから、インパクトの感覚を自分のものにできたことで、自信を持って打席に立てるようになった印象がある。