最下位・阪神に見た唯一の光。大山悠輔は「真の4番」となりえるか (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 若手を育てる時、首脳陣は選手ひとりひとりに対して、育成プランを立てる。指導法はもちろん、将来的に何番バッターにするかというところまで考える。そこからスタートして、シーズン中の調子に応じて、ある時は追い込み、ある時は休ませて、「一軍で通用するバッティング」というものを身につけさせていく。これは理想ではなく基本だ。

 そう考えると、大山のようにまだ2年目でさしたる実績のない打者は、まずは6番あたりで使い続け、自分の打撃をマスターさせることが本当の育成ではないか。4番というのは特別なものだ。少なくとも、攻撃陣の責任を背負うことになり、自分のことだけを考えられなくなる。正直、今の大山には重荷にしかならない。

"獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす"という言葉があるが、今はそんな時代じゃない。4番を打たせて、その重圧から打撃を狂わせ、それまでの好調時のスイングを忘れてしまうことなどいくらでもある。事実、シーズン最終盤の大山は、好調時の打球ではなかった。

 いずれにしても大山が本物かどうかは、今季だけでは判断できない。今オフ、他球団は大山との対戦データをすべて洗い直し、どこが苦手で、どのような配球だと崩せるかといった具合に、丸裸にしてくる。そのデータをもとに、来季は本気で抑えにかかってくるだろう。容赦ない内角攻めも続くに違いない。

 そうした試練に立ち向かい、乗り越えてこそ本物の打者となるのだ。来年、大山がどんな打者になるのか、今から楽しみは尽きない。

(つづく)

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