記録的最下位からCS進出へ。ヤクルトを変えた青木宣親の献身力 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 宮出隆自打撃コーチは「まず結果を出していることが、説得力を生んでいますよね」と言って、こう続けた。

「そのなかで、自分に影響力があることを感じながらベンチで声を出したり、アドバイスをしてくれたり......。たとえばバレンティンにも『頑張ろうぜ』とか、しかもいいタイミングで声をかけてくれています。

 僕も現役時代に感じましたけど、同僚から激励されるとうれしいですし、コーチに言われるのとは感じ方が違います。長いシーズンを戦っていると、そういうことって大事になってくるんです。言葉は悪いですけど、僕らも(青木)宣親に頼るというか、お互いうまく利用できればいいなと。これは最初から思っていました」

 4月のある試合前練習にこんなことがあった。バッティングケージにはバレンティンが入っていたが、いつもの「ヨッシャー」というかけ声もなく、ふさぎこんでいた。異変に気づいた宮出コーチが青木に「ココ(バレンティンの愛称)に元気がないけど......」と話しかけると、突然「ストロングハート! うわー、いいわ、ココちゃん!」と、青木は過剰なまでに大きな声でバレンティンを激励した。すると、バレンティンの表情に笑顔が戻ったのだった。

 その話をすると、青木は思い出したのか、笑顔で話してくれた。

「自分としてはバランスを取ろうとしているんです。琢朗さんや宮出さんも言っているけど、コーチの言葉だけでは、それが正解でも受け取る側のとらえ方が違ったりすることがある。自分もそれがよくわかるので、僕が入ることでバランスが取れるかと。あくまでも自分は選手なので、立場をわきまえながら、みんながいい方向に行くようにしているつもりです」

 シーズンも残り少なくなり、タフな試合が続くなか、プレーヤーとしての青木への期待は大きい。青木は自身のバッティングについて「良くも悪くもなく、波があってもすぐに修正できている」と話すが、満足するまでにはいたっていない。

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