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崖っぷちの選手を救い、4700万円を
もたらした1本のホームラン (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──キャッチャーからすると、ピッチャーの性格は気になりますか?

米野 そうですね。でも、ピッチャーはわかりやすい人が多いですね。基本的には、みんな「自分が一番」と思っている。そうじゃなきゃいけない部分もあります。どんどん調子に乗せたほうがいいピッチャーか、勘違いして失敗するピッチャーかを見極めて、「そうじゃないよ」「ここには気をつけて」というのをうまく伝えるのがキャッチャーの仕事ですね。ブルペンではいいボールを投げるのに、試合になるとダメなピッチャーもたくさんいました。

──それは、なぜそうなるんでしょう?

米野 ブルペンで試合の感覚を持って投げているかどうかじゃないでしょうか。アウトカウントや打順を想定して投げたり、試合をイメージして投げたりすることで結果は変わってくると思います。若い選手の場合、ただ自分が気持ちよくなるボールを投げてしまうことが多くて。

──プロ野球はお互いの長所を消す戦いです。試合では、バッターはなかなかフルスイングできませんし、ピッチャーも気持ちよくは投げられない。

米野 ある時、急にコントロールがよくなったピッチャーがいて、その人に理由を聞いたことがあります。すると、「意識を変えたらコントロールがよくなった。ブルペンでは"こういうボールを投げるんだ"という意識を持たないと」と言われました。

──米野さんは2006年に116試合に出場しながらレギュラーはつかめませんでした。その後はどんな気持ちでシーズンに臨んでいましたか。結果的には「細く長い」プロ野球人生になったわけですが。

米野 2007年に32試合しか出られず、精神的にはきつかったですね。ずっとモヤモヤしたままプレーを続けていました。控え捕手という役割で、出番もなかなかありませんでしたから。自分の実力を出し切れない悔しさがありました。

──2010年のシーズン途中に埼玉西武ライオンズにトレードされました。この時の気持ちは?

米野 自分の中に行き詰まり感があって、野球が楽しくなくなっていました。野球をする喜びを感じなくなっていて......このころ、キャッチャーをやめようと思って、球団にその話をしました。

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