コサリオと呼ばれた糸原健斗。
「死ぬつもりで打席に...」と猛アピール

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 本当にこんなに身長あるのかな――。

 阪神タイガース糸原健斗が高校生だった当時、本人にそんな「疑惑」をぶつけてみたことがある。

 登録上の数字は「175センチ」となっていた。高校球児としては平均より少し高い程度の部類だが、確認してみたのは実際の糸原の体が数字よりも小さく見えたからだ。

2月11日のDeNAとの練習試合で豪快な一発を放った糸原健斗2月11日のDeNAとの練習試合で豪快な一発を放った糸原健斗 しかし、当の本人は悪びれる様子もなく「ありますよ」と即答した。私が感じた誤差もさして問題にするほどではなかったこと、そして本人の態度が実に堂々としていたこともあって、それ以上は追及しなかった。

 だが、多くの関係者は「ああ言ってますけど、実際はもっと小さいはずですよ」と苦笑混じりに打ち明けていた。

 あれから8年の年月が経ったが、今でも糸原のプロフィール上の身長は「175センチ」のままだ。

「『コサリオ』やな......」

 2月11日、DeNAとの練習試合を終えたばかりの金本知憲監督がそうつぶやくと、取り囲む報道陣の間で笑いが起きた。

 この日、糸原は4回裏にライトスタンドへソロ本塁打を放っていた。金本監督は糸原について、この日、1本塁打1タイムリーという衝撃デビューを果たした新外国人・ロサリオにひっかけて「コ(小)サリオ」と命名したのだ。

 金本監督は、糸原についてこうも語っている。

「もともと去年から強い打球を打っていたし、体もひと回り大きくなってる。さらにパワーアップしているからね」

 金本監督は昨季から入団1年目の糸原について「速球に振り負けない」とたびたびコメントするなど、高く評価していることがうかがえる。この日の「コサリオ」発言は、糸原を売り出すための後方支援ととるのはうがち過ぎだろうか。

 今季、阪神の内野陣は大きく様変わりしそうな気配がある。

 まず、昨季、サードとして138試合に出場している鳥谷敬がセカンドにコンバートされた。空いたサードには、打撃面の成長著しい2年目の大山悠輔が入る見込みだ。もちろん、昨季セカンドのレギュラーを張りながら右足関節手術で出遅れている上本博紀も黙ってはいないだろう。そして、ファーストに早くも圧倒的な結果を残しているロサリオが入れば、残るポジションはショートのみになる。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る