内川とサファテの気迫。「巨大戦力が心をひとつ」にしたら、もはや最強
喜びに満ちた場内を監督、選手たちが一周し、ファンと至福の時を分かち合っていた頃。一塁ベンチ前ではソフトバンクの王貞治会長が取材陣に囲まれていた。
「こんなに胸を熱くしたのは久しぶり。私もいろいろ優勝も経験してきたけど、これほど興奮したのはなかなかないですね。選手たちが涙しているのを見て、もらい泣きしました」
これまで幾多の勝負を経験し、日本一の喜びも味わってきた会長の昂(たか)ぶりこそ、日本シリーズの苦しさを物語っていた。
2年ぶりの日本一を達成したソフトバンク 工藤公康監督も歓喜のお立ち台で「苦しかった」と素直な思いを口にしたが、3連勝で「あっさり決まるか......」と思われたところから2連敗。福岡へ戻った第6戦も流れはDeNAにあると感じた。
ソフトバンクには試合前から気になる"ズレ"があった。初戦に7回1失点で勝利した千賀滉大が背中の痛みから先発を回避。第2戦に投げた東浜巨が通常より間隔を詰めた中5日での先発となった。
東浜は立ち上がりから快調だったものの球数が多く、5回に1点リードを追いつかれ、なお一死一、二塁で打者は2番の梶谷。ここでベンチは嘉弥真新也へのスイッチを選択した。この試合の大きなポイントだった。
嘉弥真は2戦目に筒香嘉智から空振り三振を奪うなど3試合に登板し、打者4人に対して2奪三振、1四球とシーズン通りの投球を見せていた。特に調子を上げてきた筒香との対戦を考えれば、ソフトバンクにとっての切り札ともいえた。
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