無名の独立リーガーに
野球人生を完全燃焼させた、
井口資仁の大きな背中 (3ページ目)
プロ野球選手になるという夢を追いかけて、もがいていた矢島だったが、井口とトレーニングしたことによって、ある種の悟りを開いた。自分が目指していたものの前には、とてつもなく高い壁が立ちはだかっていたことに気づかされたのだ。
「なんだろう......やっぱり超えられない能力の差っていうのは感じました」
そう思う一方で、ハードなトレーニングによって自分の体がみるみるうちに変わっていくのを感じていた。
井口との自主トレが終わり、第2の人生を模索すべく高校野球のコーチをしていた矢島のもとに1本の電話が鳴った。声の主は、海外のトライアウトでよく顔を合わせていた独立リーガーだった。
井口がホワイトソックスの正二塁手としてメジャーの舞台に立ってから遅れること1カ月半、矢島はアリゾナのフィールドにいた。この年に創設されたゴールデン・ベースボール・リーグ(独立リーグ)の日本人チーム"サムライ・ベアーズ"の一員として、アメリカの大地を踏むことになった。メジャーと独立リーグの差はあるが、紛れもなく井口と同じアメリカのプロ野球の舞台だった。
「なんだか不思議な感じでしたね。井口さんと同じアメリカでプレーしているんだなって思うと。もちろん、レベルはまったく違うんですけど......」
しかし、矢島のいたサムライ・ベアーズは戦力不足もあってリーグ最下位に沈むと、そのまま解散となった。そして矢島は、今度こそユニフォームを脱ぐ決意をした。帰国後、衛星放送の映像には、ワールドシリーズのトロフィーを掲げる井口の姿があった。その映像を見て、矢島はあらためて井口との距離の大きさを感じた。
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