無名の独立リーガーに
野球人生を完全燃焼させた、
井口資仁の大きな背中 (2ページ目)
「それまでも格上の選手と対戦したことはありましたし、チームメイトにプロに行ったヤツはいましたけど、井口さんクラスの選手を目の前にするなんてことはなかったですから。もう緊張しちゃって......」
空港のロビーであいさつをすると、井口は「よろしく」とだけ言って、車に乗り込んだ。
「話しかけてくださるのですが、やっぱり別世界の人ですから。いろんな意味で距離感は感じていましたね。バッティングピッチャーもさせていただいたんですけど、イップスになりそうなくらい緊張しました(笑)」
井口を慕ってやってきた数名のプロ選手も参加してのトレーニングが始まろうとしたとき、チーフトレーナーが矢島に声をかけた。
「見ているだけもなんだし、どうせなら一緒にやれば。今年まで現役だったんだろ」
何を思ったのか、チーフトレーナーはユニフォームを脱ぐ覚悟をしていた矢島を"現役復帰"させたのだ。正直、どういう意図で声をかけたのかは今もわからない。ただ、矢島自身は現役への未練が体中からにじみ出ていたからだろうと思っている。
「井口軍団」の自主トレは、矢島の想像を超えるものだった。年末年始の帰省を挟んで2カ月近くにわたって行なわれたトレーニングは、これまで体験したことのないハードな内容で、最初はメニューをこなすことさえできなかった。
「一流選手がここまでやるのかって感じでした。段々と慣れてきて、回数だけはなんとか同じだけこなせるようにはなったのですが......ただ、井口さんは負荷が全然違いました。ほかのプロ選手と比べても段違いでした」
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