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「野々村イズム」を胸に。
阪神5位の糸原健斗は魂でプレーする男 (6ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 糸原は言う。

「きれいなヒットじゃなくてもいい。形がグチャグチャでもいい。プロでも死ぬ気でプレーしたいんです」

 一方、恩師の野々村氏は、糸原がドラフト指名されたことについて深い感慨を抱いている。

「ドラフトの後、糸原から報告の電話がかかってきたんです。ワシが『やったな』と言うと、普通は『ありがとうございます』と言うものですが、糸原は『やりました〜!』と嬉しそうに言っていてね(笑)。今まで梶谷をはじめ教え子がプロに進むことはありましたけど、糸原は体が小さくて今まで評価されてこなかった。でも、ワシは絶対にプロでやれる男だと思っとります。いまは打っても、守っても、走っても平均点の選手かもしれんけど、アイツは魂でプレーする男です。必ずタイガースを救う選手になってくれると信じとります」

 糸原のプレーを7年間追いかけ続けている筆者も、野々村氏とまったく同じ思いを抱いている。チームの窮地でこそ存在感を発揮する男、それが糸原健斗という選手なのだろう。

 糸原は最後に、プロに懸ける思いを静かに語った。

「高卒、大卒の選手は『就職』ですが、僕は『転職』なので。会社を捨てて行く覚悟を持って、戦っていきます。プロは少ないチャンスをつかむか、つかめないかの世界だと思います。社会人で『負けたら終わり』の世界で戦ってきた経験を生かして、1年目からがむしゃらに結果を出していきたいです」

 いずれ近い将来、阪神ファンが「糸原健斗は当たりだった」と振り返るような存在になることを、陰ながら祈っている。

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