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「野々村イズム」を胸に。
阪神5位の糸原健斗は魂でプレーする男 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 そんな矢先に転機が訪れた。糸原は善波達也監督の指示でバットを極端に短く持つようになり、以降は結果が出るようになったのだ。3年時は春秋連続でリーグのベストナインに選ばれ、大学選手権では打率5割で首位打者に輝いた。

 東京六大学リーグの名門で結果を残すことは、並大抵のことではない。しかし、高校時代の天才的な打撃を見ている者にとっては、バットを短く持ってプレーする糸原に対して物足りなさを覚えたのも事実だ。糸原本人も「(短く持つのは)メッチャ抵抗がありました。でも結果が出ていたので......」と葛藤があったことを明かしている。

 そして、結果次第ではプロ入りも視野に入ってくるはずだった大学4年のシーズンで、糸原は再びつまずいた。

「プロに行きたい、行きたいという思いが強すぎて、全然ダメでした」

 4年春のリーグ戦で打率.163と空回りした糸原は、プロ志望届の提出を見送り、社会人のJX−ENEOSに入社する道を選ぶ。

 社会人では1年目からレギュラーとなり、2年目の2016年は主に3番打者として活躍した。チームは都市対抗への出場権を逃すなど苦境を味わったが、糸原個人は安定した結果を出し、都市対抗には東芝の補強選手として出場している。

 いまはもう、打席で「何も考えずに打つ」ことはないという。

「ピッチャーの研究をするようになりましたね。いいピッチャーは情報を頭に入れないと打てないですし、結果も出ないですから」

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