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「野々村イズム」を胸に。
阪神5位の糸原健斗は魂でプレーする男 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

「高山も坂本も『勝負強い選手です』といいことを伝えてくれたみたいで......、かわいがっておいてよかったです(笑)」

 そして迎えた10月20日のドラフト会議、糸原の名前は阪神の5位でコールされた。もし今年ドラフト指名がなかった場合は、プロ入りをあきらめ社会人で骨を埋める覚悟だったという。

 プロで勝負するために、まず何が必要か── 。糸原にそう聞くと、意外な言葉が返ってきた。糸原はまず「守備」を挙げたのだ。

「まず守れないと使ってもらえないので、内野ならどこでも守れるということをアピールしたいと思います。派手なプレーではなく、当たり前のことを当たり前にやるプレーを見せたいです」

 大学、社会人での糸原のプレーを見ていると、はっきり言って高校時代のような天才性を感じることは少なくなった。だが、その代わりに見えてくるものもあった。それは、糸原の「際(きわ)での強さ」だ。

 チームの逆境でしぶとく結果を残す打撃、抜けたら終わり......という打球を球際で抑える守備。この生死を分ける場面でのたくましさこそ、いまや糸原の最大の武器になっている。糸原にそのプレーの生命力について聞くと、こんな言葉が返ってきた。

「野々村イズムでしょうね。間違いなく」

 高校時代の恩師・野々村直通氏(現・教育評論家、画家)のことだ。「やくざ監督」と呼ばれ、個性派監督として有名だった野々村氏だが、選手に死生観について深く考えさせる教育者としても知られた。梶谷隆幸(DeNA)をはじめ、多くの教え子は卒業後も野々村氏から受けた教えの影響を口にする。

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