トライアウトの目玉に。
快速球&怪スライダーの2投手に吉報は届くか (2ページ目)
そう巽が振り返った一球は、甲子園球場のスコアボードに「148km/h」と表示された。それまで11人の投手が登板していたが、多くの投手のスピードは140キロに届かなかった。そんななか巽が投げ込んだ148キロに、スタンドに集まった1万2000人の観衆もどよめいた。
気温の低い晩秋の午前中という条件下で見せた快速球。その意味は大きい。しかし、巽は登板後、こう言ってのけた。
「今日は天気も良くて、もっと寒いのを予想していましたし、汗をかくくらいで良かったです。それに今年はずっとファームで、中継ぎとして『いつでもいける』という状況で投げてきましたから」
今季、巽は二軍(ウエスタン・リーグ)で38試合、三軍でも10試合に登板している。二軍での成績は4勝1敗、防御率2.72とまずまずだったが、一軍での登板のチャンスは1試合もなかった。巽は「僕の実力が足りなかったから、言い訳にはできないけど......」と前置きしながらも、「やっぱりチャンスが少なかったな......という思いは、なくはないです」と本音を漏らした。
トライアウトでの投球は、長江翔太(前・巨人育成)に四球、加藤健(前・巨人)に二塁ゴロ、大平成一(元・日本ハム)に三振という結果だった。
帰り支度を済ませ、ロッカールームから出てきた巽は、球界関係者から「(関係者用の資料に)『MAX147キロ』って書いてあったけど、トライアウトでMAX出してどうするんだよ」と冗談交じりに冷やかされた。もちろん、プロは球が速ければいいわけではない。ただ、巽には手元で伸びてくるようなキレと、左打者のインサイドに食い込んでくるカットボールという武器がある。
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