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プロ野球トライアウトに現れた
「左腕ナックルボーラー」は何者なんだ? (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami shirt
  • 祐實知明●写真 photo by Sukezane Tomoaki

 そして植松にとって2度目の甲子園は昨年。ロッテに高校生ドラフト3巡目で入団してから8年、待望のプロ初登板、初先発となったのが6月4日の阪神戦で、場所が甲子園だった。結果は6回を投げ、4安打、5四球、6奪三振、1失点。十分に試合は作った。しかし1週間後、本拠地・QVCマリンフィールドで先発した中日戦が2回6失点と打ち込まれ、翌日に登録抹消。イースタンでは15試合、71回2/3を投げ6勝(2敗)を挙げたが、10月に戦力外通告を受けた。

 甲子園を含めた一軍での2試合の内容に、植松は心残りがあった。それが今回の挑戦にもつながったのだが、じつは一軍での2試合で植松はほとんどナックルボールを投げていなかったのだ。自信を持っていたにも関わらず......投げなかった理由は、キャッチャーが捕れなかったから。いや、正確には「いつものように捕れないだろう」「ミスを生む可能性が高い」と周囲が判断したからだった。だからサインが出なかった。磨いてきた武器を使えない、その意味で植松にとっては、やるせなさが残るマウンドだった。

「自分のなかでは"それ"で上に呼ばれたと思っていたのに、そのボールを投げ切れなかった。僕はしっかり捕れなくてもいいから投げたかったんですけど......。自分がやってきたことを出せなかったという思いが残ったのはたしかです。去年、戦力外を言われたときも、それもあって余計にまだやりたい気持ちがありましたし、その気持ちが今年も残って、最後に決めたのが10月。球団に『もう1回挑戦させてください』と話をさせてもらいました」

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