高校時代に放った大ファウルに西川遥輝のスラッガーの資質を見た (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 キャッチャーの要求はインコースだったが、広島の守護神・中崎翔太が投じたストレートは真ん中高めに入ってきた。これを、体をやや一塁側に逃がしながら見事なボディターンで弾き返した。ヘッドの効いた弧の大きなスイングは、西川らしいじつに伸びやかなひと振りだった。

 シリーズ史上2本目となるサヨナラ満塁ホームラン。球史に残る劇的弾が、スラッガーとしての素質開花を告げる1本になるのではないか。試合後、栗山監督はこんな言葉を残した。

「もともとホームランを打てる打者だったけど、今年1年は足を使うため、長打を捨ててくれた。でも来年は、あれ(長打)とのミックスが必要になるという話を城石(憲之)コーチともしている。西川の完成形? オレのなかでイメージする人はいるんだけど、それはまだ遥輝に言うつもりはない。自分で見つけてくれれば......」

 この言葉を聞いて、やはり浮かんだのがイチローだった。栗山監督が解説者、スポーツキャスターを務めていた90年代半ばに突如現れた希代の天才打者・イチロー。柔らかく美しいフォームからヒットを量産したと思えば、時にスラッガー顔負けの特大弾を放つ。当初は漫画の世界の夢物語とも思われた大谷翔平の二刀流をサポートした栗山監督のこと。西川にイチローの姿を重ね合わせる次なるプランが出来上がっていたとしても不思議ではない。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る