選手を信じ、選手が応える。
野球の神様に愛された「栗山野球」の真髄
2016年の日本シリーズは、日本ハムが広島を4勝2敗で下し、10年ぶりの日本一を達成した。試合後、日本ハムの栗山英樹監督は開口一番、こう語った。
「感動を通り越して......なんかホッとしちゃってさぁ。とにかくみんなに迷惑をかけなくてよかった」
その表情は日本一達成の充実感よりも、長くて厳しいを終えた安堵感に満ちていた。
10年ぶりの日本一を達成し、胴上げされる日本ハムの栗山監督 振り返れば、苦闘の連続だった。初戦をエース・大谷翔平で落とし、2戦目も広島投手陣の前に打線が沈黙するなど、敵地で2連敗という最悪のスタート。結果もそうだが、2試合でタイムリーはゼロ。投打ともにかみ合わず、「このまま4連敗するんじゃないか......」と思われるほど、チームの状態は悪かった。
それでも栗山監督は冷静に前を向いた。本拠地・札幌ドームでの第3戦の試合前、栗山監督はこう話した。
「2連敗したけど、日本シリーズは3つまで負けられる。そのなかで自分たちの野球をどこまで見せられるか。ただ、短期決戦なので勝負にはこだわる。勝つ確率の高い作戦、起用を考えていく。やるべきことをきっちりやらないと野球の神様は許してくれないから。もう一度、原点に立ち返って戦いたい」
その言葉通り、1、2戦で調子が上がらない陽岱鋼をスタメンから外し、試合中はブルペンと密に連絡を取り、リリーフ陣の状態を何度も確認した。
1 / 4