選手を信じ、選手が応える。
野球の神様に愛された「栗山野球」の真髄 (3ページ目)
西川は初戦で内野安打を2本放ったが、2戦目以降は不振にあえいでいた。劇的な一打を放った5戦目も、それまで4打席はノーヒット。そして9回裏、二死満塁で回ってきた5打席目。当たりの出ない西川に"代打"という選択肢もあったはずだ。しかし、栗山監督は「その選択肢はなかった」と言い切った。
第5戦でサヨナラ満塁本塁打を放った西川遥輝(写真中央)「状態のいい選手を使うのは短期決戦の鉄則なんだけど、状態の悪いときに(西川)遥輝を使える形を今年1年かけてやってきた。その方向性ははっきりしていたので、遥輝の持っているよさを信じていけた」
そして打った西川も「チャンスで打てなかった僕を代えずに打席まで送り届けてくれた」と感謝の言葉を口にした。指揮官の信頼にきっちりと結果で応える選手たち。これこそ、日本ハムの最大の強みであろう。
大谷翔平という投打で圧倒的な力を見せつけるスーパースターを擁しながら、決して彼だけに頼った野球はしない。以前、栗山監督はこんなことを言っていた。
「野球はひとりではできないし、とんでもない選手がいても勝てるとは限らない。ただ、チームの方向性だけはしっかり選手に伝えたい。そこがしっかりすれば、どんな戦いにおいてもブレることはない」
指揮官自ら「短期決戦は特別」と理解しながら、最後まで自分たちの戦いを変えることはなかった。つまりそれは、采配や戦術といったものよりもっと深い部分での「日本ハム野球」の完成を意味する。
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