オランダ人のバンデンハークは
なぜ「無双の先発投手」になれたのか?
ヘンリカス・ニコラス・バンデンハークという名前は、とても野球選手っぽくない。だからなのだろうか、ほかの選手とはまったく違う野球人生を歩んできた。オランダで生まれ育った「リック」と呼ばれる彼は、プロの野球選手として日本が3カ国目になる。日本に来る前は、アメリカ、韓国でプレーしていた。
昨年9勝0敗の成績を挙げ、チームの優勝に大きく貢献したバンデンハーク
リックことバンデンハークは、ドイツやベルギーとの国境近く、アイントホーフェンという南オランダの都市で育った。物心がついてからの彼の夢は、サッカーに夢中な周りの子どもたちとは違い、メジャーリーガーになることだった。
彼の父親はメジャーの大ファンで、副業として野球のコーチをしていた。そして「将来は息子をメジャーリーガーに」という夢を抱いていた。
バンデンハークも幼少の頃からアトランタ・ブレーブス、トロント・ブルージェイズ、ニューヨーク・ヤンキースといった当時の強豪チームを応援し、盗塁王12回のリッキー・ヘンダーソンや、毎年のようにサイヤング賞候補に挙がっていたジョン・スモルツの大ファンだった。
ただ、オランダで生まれ育った野球選手は少なく、バンデンハークにとってメジャーリーガーは近い存在ではなかった。たしかに、アンドリュー・ジョーンズ(元ブレーブス、楽天など)やヘンスリー・ミューレンス(NPBでの登録名はミューレン/元ロッテ、ヤクルトなど)など、オランダを代表する選手はいたが、彼らはカリブ海に位置しているオランダ領キュラソー島の出身。メジャーの長い歴史を振り返っても、オランダ本土出身の選手はほんのひと握りしかおらず、バンデンハークが子どもの頃、オランダ本土出身でメジャーに昇格した選手はたったふたりだけだった。
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