「育成の巨人」復活へ。新設の三軍制度はどこまで機能するのか? (2ページ目)

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • photo by Kyodo News

 その中で、育成から支配下登録を勝ち取ったのが山口鉄也であり、松本哲也だった。つまり、選手を育成するノウハウは持っている。ただ、常に優勝争いを求められる巨人で、成績が少しでも低迷すれば再び補強に頼る時期が出てきてしまう。たとえば、12年にはFA権を行使した杉内俊哉、村田修一を同時に獲得し、結果として若手の出場機会を奪ってしまった。

 それが今のチームの停滞へとつながり、再び、育成を重視しようと舵(かじ)を切り始めた。久保博球団社長は、「中長期的に若手を育てることが、チーム全体を引き上げる」と力を込めた。

 三軍は現状で育成選手を中心に、24~25名ぐらいの編成を予定している。監督には、今季まで一軍のヘッドコーチを務め、私生活を含めた厳しい指導で知られる川相昌弘氏が就任し、伸びしろのある若手を鍛えていく。

 対戦相手は、独立リーグや通常は交流戦でしか試合をしないウエスタンリーグのチーム、さらにはソフトバンクの三軍などと年間100試合程度をこなす予定だ。ただ、それによって二軍の試合や練習量が減っては意味がない。三軍はビジターを中心に日程を組んでいくという。

 これまでは二軍でも、期待の大きい若手が重宝され、どうしても選手間で実戦経験の差が生まれてしまっていた。三軍を創設したことで、全選手に一定の打席数、登板数が確保できる。試合をこなすことで成長をうながすとともに、堤辰佳GMは「試合の機会を増やしてあげて、ちゃんと評価する場を設けないと、こちらも適正な評価ができない」と狙いを明かした。試合の中でこそ目立つ選手もいる。埋もれている才能を発掘するためにも、試合数をこなすことは大きな意味合いを持っている。

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