なんと6度目のトライアウト。大平成一を支える「鬼嫁」の愛 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 さすがに「トライアウト慣れ」を感じてしまうコメントだ。そこでひとつ気になったのは、昨年は2回開催されたトライアウトをどちらも受験していないこと。その時は気持ちが挫(くじ)けてしまったのだろうか? しかし、大平は苦笑して首を横に振った。

「いや、ヒザをケガしてしまって、行きたくても行けなかったんです。体が万全なら去年も受けるつもりでした」

 さらに、2013年のトライアウトで2回中1回しか受けていないことにも理由があるという。

「1回目のトライアウトで、その日の先頭バッターとして打席に入ったんです。これは初球からフルスイングして目立ってやろうと思って……」

 多少のボール球なら振ろうと意気込んだ初球、高めのボール球に手を出した瞬間に「親指が持っていかれた」という。いきなり親指を負傷し、その後は打撃中も守備中も痛みが収まらず「早く終わってくれ……」と思いながらプレーしていた。

「本当に最悪でした。あれでは終わりたくない……という思いは、確かにありました」

 つまり、故障で受けられなかった3回も含めて、大平はすべてのトライアウトを受けたいと考えていたのだ。

 それにしても、いくらNPB復帰への思いが強くても、NPBよりも待遇面で大きく劣る独立リーグで4年間もプレーするのは、「元プロ」としての誇りが許さないのではないか。そんなことを聞くと、大平はうなずきながら答えた。

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