14年ぶり優勝。ヤクルトの選手たちを動かした「真中イズム」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 三木コーチは「なぜミスが起きたのか?」「なぜファインプレーになったのか?」など、ひとつひとつのプレーに対して「なぜそうなったのかを考えよう」と、選手たちに問いかけている。考えることで、それが次のプレーにつながると三木コーチは言う。

「野球の試合は、どのプレーも“線”でつながっていると思うんです。ひとつのプレーが“点”で終わるのではなく、ワンプレーがゲーム展開を左右し、次の試合に影響を与えることがあります。ミスをした時、ただ『気持ちを切り替えよう』ではなく、その失敗を次に生かすことが大事なんです」

 たとえば、捕手の中村は4月17日のDeNA戦に3-1で勝利した後、顔をしかめながら言った。

「完封で終わらせないといけない試合でした。9回に失点してしまったことで、明日のゲームの入り方が重要になってきます。ちゃんと気を引き締めないときつくなる。明日の試合前ミーティングで(先発予定の)石川さんとしっかり話をしたい」

 その翌日の試合、中村の細心の注意が功を奏し、ヤクルトが4-0で快勝した。

 8月21日の中日戦では、敗色濃厚の終盤に山田のエラーがきっかけとなり失点。その翌日のゲームの1回表、中日の先頭打者・大島洋平がライトへ抜けそうなゴロを放つも、山田が好捕。1アウトをもぎ取ると、この試合で山田は1試合3本塁打を放ってみせた。

「昨日の試合でエラーをして1点を失っていますし、今日は初回から集中していこうと思っていました。その意識があったから、初回のゴロをさばくことができたんだと思います」(山田)

 三木コーチは山田の初回の守備について、こんなことを話してくれた。

「大島のゴロがヒットになっていたら……。昨日のゲームのつながりから、ちょっと空気が重くなって、先発の石山(泰稚)もプレッシャーを感じただろうし、いろんなところに影響が出たと思います。(山田)哲人自身も守備で貢献することで、『これでいける』と思い切って打席に入れたんじゃないですかね」

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