「ソフトバンク黄金時代」を予感させた上林誠知の衝撃弾
目下、パ・リーグ首位を大独走するソフトバンクに、20歳の新星が現れた。
8月25日、ロッテ戦(ヤフオクドーム)に「9番ライト」で出場した上林誠知(うえばやし・せいじ)だ。仙台育英高から入団して2年目の右投げ左打ち外野手である。前節の楽天戦でプロ初スタメンを果たし2度目の抜擢となったこの日、1打席目に嬉しいプロ初安打をマークしたばかり。そんな若鷹がとんでもない大仕事をやってのけた。
8月25日のロッテ戦でプロ初本塁打を放った2年目の上林誠知
試合をひっくり返された直後の6回裏、第3打席だった。ソフトバンク打線はロッテ先発のイ・デウンの制球難を見逃さず、二死走者なしから3連続フォアボールで満塁の好機を作った。一打逆転の場面だが、工藤公康監督は「交代は考えなかった」と上林をそのまま打席に送り出す。藤井康雄チーフ打撃コーチから「結果を気にせず思い切って行け」と背中を押された。
ボール球が2球続く。しっかり見逃し「ボールが見えている」と確信できた。3球目の直球に手を出す。空振りだったが、前の2打席ともファーストストライクをスイングするなど、積極性が光っていた。続く4球目はまたしてもボール。これでカウントは3ボール1ストライク。雰囲気としては「同点押し出し」が頭をよぎった。しかし、上林は積極姿勢を変えなかった。
「それまでフォークを多投していたので、真っ直ぐを絞って待っていました」
5球目、狙っていたストレートに再びバットを出した。148キロの低めへのストレート。決して簡単な球ではなかったが、大振りすることなく最短距離で強く振り抜いた。打球は右中間スタンドの中段に着弾。大きな弧を描く逆転満塁ホームランは、もちろんプロ第1号だ。
「打った瞬間に行ったと思いました。でも、ベースを回っている時はワケが分からなかった」
1 / 4