始まりは2年前。DeNA筒香嘉智はいかにして覚醒したのか? (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 話し合いの中で、ふたりが目標に定めたのが「打点をあげること」「毎試合、チームに貢献すること」だった。大村コーチが言う。

「全試合、全打席で勝利に貢献する打者を目指す。現実的には年間500打席近くあるので、実はホームランを40本打つことよりも難しいんですけどね(笑)。それぐらいの気持ちを持って、無駄な打席をなくしていこうと。100打点を稼ぐのに、ホームランが100本必要かといえばそうではない。たとえば、20本塁打で30打点ぐらいですから、残りの70打点をタイムリーや犠牲フライで稼ぐことになる。それを可能にするには、多くの引き出しを持つ必要があるし、筒香はそれができる選手なんです」

 そう言って、大村コーチはDeNAが9回二死走者なしから2点差を逆転した5月2日の中日戦を引き合いに出した。

「9回表二死で打席に入ったのが筒香でした。あの打席、筒香はボテボテのショートゴロを全力で走って、内野安打にしました。つまり、勝利への1パーセントの可能性をこじ開けたんです。このように、勝利への貢献の仕方はいろいろあるんですよ」

「無駄な打席をなくす」――筒香の打席を見ていると、その意志が伝わってくる。5月5日のヤクルト戦でもそういう場面があった。逆転を許した直後の6回裏のことだ。この回先頭の筒香はコンパクトなスイングでセンター前にヒットを放ち出塁。それがきっかけとなりチームは再逆転に成功し、勝利を呼び込んだ。

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