楽天ドラフト1位・安樂智大が父と交わした7つの約束

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ドラフト直前、ある球団のスカウト部門責任者が声を潜めてこう語った。

「もし、ウチが(安樂智大の指名を)考えるなら、トミー・ジョンも視野に入れて判断するでしょう。場合によっては、まず手術をして2年目からでも、ということです。その方が本人も球団も不安がなくなる。この夏に投げられたといっても、スピードも完全に戻ってはいなかったわけですし、やっぱり不安はあります」

済美高時代は2度甲子園に出場したが、全国制覇は果たせなかった済美高時代は2度甲子園に出場したが、全国制覇は果たせなかった

 昨年秋の県大会初戦で痛めた右ヒジの不安を指してのシビアな本音だった。今夏、愛媛県大会で安樂のスピードは148キロまで戻ったが、完調にはほど遠い内容だった。ただ、そんな状況にありながらドラフトでは楽天、ヤクルトが1位で指名(抽選の結果、楽天が交渉権を獲得)。あらためて、高い評価を受けていることを証明した。

 苦しみながらも、たどり着いたプロの世界。またひとつ、子どもの頃から追い続けてきた大きな目標を達成した。「小さい頃から目標を立てて、そこへ全力で向かっていく子どもでした」と話したのは、父・晃一さんだ。

「普通なら『こうなりたい』という言い方をする子どもが多いと思うのですが、智大は『絶対にこうなるんだ』と、いつも言っていました。目標を決めたら、それを達成するまでやり続ける強さを持っていましたね」

 晃一さんが口にした「目標」については、安樂本人からも聞いたことがある。

「小学校の時にお父さんと約束というか、目標を立てたんです。高校では5季連続して甲子園に出る。甲子園で春夏連覇を達成する。4番を打つ。エースになる。150キロを出す。ドラフト1位でプロに行く......。年代ごとに目標を立てて、自分で"いいプロジェクト"って名付けていました」

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