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里崎智也「ひょうたん型のような野球人生だった」 (3ページ目)

  • 中村計●文 text by Nakamura Kei
  • photo by Kyodo News

―― ピッチャーというよりは、キャッチャー心理を読むわけですね。

「配球を決めるのはキャッチャーですから。大別すると、ミーティング通りやるタイプと、自分の感性を重視するタイプがいる。データ派はピンチになればなるほどデータ通り攻めてきますね。打たれたら『なんでミーティング通りやらないんだ!』って怒られますから。だからバッターからすると、自分はこういう風に分析されてるんやということがわかっていれば、山をはりやすい。僕はどちらかというと感性派のキャッチャーでした。怒られても何とも思わないタイプだったので……」

―― 第1回WBC決勝のキューバ戦で松坂大輔と組んで、8球連続でインコースの真っ直ぐを要求したという場面がありました。あのリードはまさにその最たる例ですね。

「あの時は相手のデータがまったくない中での試合でしたからね。インコースの真っ直ぐが打てそうもなかったし、松坂のボールも走っていた。あそこで変化球が甘くなって打たれたりしたら、調子のいい真っ直ぐまでおかしくなりかねない。それが嫌で、読まれてもいいから真っ直ぐで押したんです」

―― データを重視しても、ピッチャーがその通り投げてくれなければどうしようもないですしね。

「解説者の方は好き勝手言いますけどね(笑)。『インコースが弱いのに何で突かないのか』とか。そんなことはわかっていますよ(笑)。でも、ピッチャーの真っ直ぐが130キロしか出ないんだから行けないでしょ! それでもインコースの真っ直ぐを要求したら独りよがりになるだけ。投手のレベルに合わせて、こちらもリードしていかなくてはいけません。でも、生まれ変わってもキャッチャーだけはやりたくない。もちろん、やりがいもありましたけど、やることが多すぎます」

―― 捕手がある程度、自由にボールを要求できるレベルの投手とは?

「先発ピッチャーで言えば、3つの球種を、いついかなるときでも8割の確率で思ったところへ投げられることですね。そうすれば10勝できる。ただ、常時145キロのストレートが投げられるとか、渡辺俊介のようにアンダースローであるとか、球種以外の武器があれば2種類でも何とかなります。そもそも、3つもいいものがあるピッチャーなんて、そういないんですよ。でも2つよければ、5回か6回は持つ。リリーフは投げるイニングが短いので2種類でいい。1つ悪くても、もう1つで押せますから」

―― 改めて現役生活を振り返って、自分のいちばんのハイライトはどこでしたか。

「やっぱり、2005年のプレイオフ第5戦で打った決勝打ですね。あれが自分を変えてくれた。次に2006年のWBCの優勝。あとは、里崎もそろそろ終わりじゃねえの、ってところで2010年に二度目の日本一になったことですね。僕のプロ野球人生は、忘れられそうになったところで、またポンって出てくる。太く長くではなく、ひょうたん型(笑)。ムラッ気があって僕らしい」

―― 今後も野球にたずさわっていかれる予定ですか。

「そうですね。お呼びいただけるところがあれば、いろいろとチャレンジしたいと思っています」

―― 現役時代、グラウンドでは近寄りがたい雰囲気を漂わせている時もありましたが、引退されてずいぶん雰囲気が変わりましたね。

「優しくなってます? ほんとは、むっちゃ優しいんですよ(笑)」

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