有終V。秋山監督がホークスに植え付けた常勝のDNA (2ページ目)
秋山監督が言ったように、日本シリーズでは随所に積極的なプレイが出た。第2戦で本塁打を放った李大浩は見事な初球の狙い打ち。第3戦では決して足で魅せるタイプではない吉村裕基が、ワイルドピッチの間に二塁から一気にホームインする果敢な走塁をみせた。さらに第5戦では、シーズン終盤に苦しんだ攝津正が6回無失点と意地の快投。捕手の細川亨は「今までやったことのない配球をしました。カーブで攻めました」と胸を張った。いずれも、失敗を恐れない姿勢が生んだプレイだった。
秋山監督は就任当初、こんなことを言っていた。
「理想の打線は1番から9番まで、打って、走って、守れる選手が並ぶこと」
「秋山選手が9人ということですか」と聞き返すと、満面の笑みを見せたが、それはあくまで夢の話。現実的な目標は、かつて自身がプレイしていた黄金時代の西武のような、選手ひとりひとりが勝つための役割をきっちりこなしていく打線だった。
ソフトバンクはシーズン終盤から日本シリーズと、新しい打順を固定させて戦った。その象徴が1番に入った柳田悠岐だ。今シーズン、自身初のフル出場を果たし、打率.317、15本塁打、70打点、33盗塁の成績を残した。まさに「秋山幸二」の再来といえる打者をあえて1番に据え、チームに勢いをもたらした。
そして開幕からCS、日本シリーズを含めた全試合で4番に座ったのが李大浩。19本塁打と4番打者としては物足りない数字だが、逆方向へのチームバッティングも厭(いと)わない姿勢は、黄金期の西武の4番・清原和博と重なる部分があった。また、下位打線も隙がなく、日本シリーズの第4戦では6番の中村晃が、阪神の守護神・呉昇桓(オ・スンファン)のストレートをライトスタンドに運ぶサヨナラ3ランを放ってみせた。
投手陣も必殺パターンはリリーフ3人による継投だ。秋山監督就任1年目に誕生したのが、攝津、ブライアン・ファルケンボーグ、馬原孝浩による鉄壁の"SBMリレー"だった。そして今季も、7回をルーキーの森唯斗、8回を五十嵐亮太、最後をデニス・サファテで締める"勝利の方程式"を完成させた。
日本一を達成し、秋山監督はインタビューとその後の共同会見で何度も「感謝」という言葉を使った。
「最高の結果が出せて、僕としては充実感でいっぱいです。6年間、ソフトバンクの監督としてやってきました。『いい思い出ができたな』と、満足です」
秋山監督はまだ52歳。まだ完全にユニフォームを脱ぐには若すぎる。またいつの日か、グラウンドに戻ってきてくれることを期待したい。
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