1985年の再現。ロイヤルズが勝てば阪神も勝つ!

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 野球好きには"もぐら"的性質を持った人が多い。つまり、チームや選手の数字を見るとあれこれと無性に掘り起こしたくなり、つい関係性を求めたくなるのである。ただ、そのおかげで先人たちの名が蘇(よみがえ)り、若い野球ファンにも彼らの偉大さが刻み込まれることもある。

今シーズン39セーブを挙げ、セ・リーグの最優秀救援投手に輝いた呉昇桓(オ・スンファン)今シーズン39セーブを挙げ、セ・リーグの最優秀救援投手に輝いた呉昇桓(オ・スンファン)

 たとえば、メジャーで活躍するイチローは、数多くの安打を放ったことで、シューレス・ジョー・ジャクソンや、ジョージ・シスラーの偉大な記録を蘇らせた。日本でも今シーズン、山田哲人(ヤクルト)が日本人右打者の年間最多安打記録を更新。そのことで、藤村冨美男(元阪神)という名選手が現代のプロ野球に蘇った。岡田幸文(ロッテ)は、プロ初打席からホームランゼロの記録を更新することで、東京セネターズ(現・日本ハムファイターズ)の横沢七郎という選手が存在していたことを、"もぐら"たちに教えてくれた。

 また、この"もぐら"たちは、プロ野球の現在と過去を並べ、奇妙な符合を見つけることも大好物である。大体は、「ただの偶然だったか」と徒労に終わることが多いのだが、その大きな意味を持たないことを発見するのも楽しい時間なのである。

 さて、現在、日米ともにプロ野球は佳境を迎えている。日本では阪神とソフトバンクの日本シリーズが行なわれており、メジャーではワールド・シリーズでジャイアンツとロイヤルズが熱戦を繰り広げている。この4チームでリーグ優勝(メジャーは地区優勝)したのはソフトバンクのみで、もし阪神が日本一となれば、日米とも下剋上という史上初の快挙が誕生することになる。

 かく言う私も"もぐら"的性質を持った人間であり、あらためてこの4球団を見比べてみた。すると、阪神とロイヤルズに面白いほど共通項が見つかったのである。

 まず前述したように、阪神とロイヤルズはともにリーグ優勝を逃しながらポストシーズンの戦いに駒を進めた。ロイヤルズはディビジョン・シリーズからメジャー記録となる8連勝をマークし、阪神はクライマックス・シリーズ(CS)タイ記録となる5連勝。両チームとも無敗のまま最高峰の戦いへとやって来たのだ。

 さらに興味をそそられたのは、両チームの歴史だ。球団の歴史は1935年創設の阪神が1969年創設のロイヤルズよりも長いが、ともにチャンピオンとなったのは一度しかない。それもなんという偶然か、両チームが悲願の初制覇を果たしたのが、今から29年前、1985年のことなのである。

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