ホークスOB・斉藤和巳が語る「3年ぶりVの立役者」 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●構成 text by Tajiri Kotaro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そしてもうひとりの大隣は黄色靭帯骨化症という難病から本当によく復活しました。マウンドに上がることができたのは、周りの人の助けがあってこそですが、彼自身に「強さ」が出てきたのも一因だと思います。入団当時の大隣は「甘さ」しかありませんでしたから。すごい才能があるのに、「なぜ、もっと頑張れないんだ」といつも物足りなさを感じていました。同郷(京都)の後輩ですし、いつも気になっていたのですが、ようやく一人前のピッチャーになってくれました。

 その一方で、優勝の原動力となったのがリリーフ陣。彼らが今年のソフトバンクを支えたといっても過言ではありません。特に、目を見張る活躍を見せてくれたのが、五十嵐亮太(63試合、1勝3敗43ホールド、防御率1.52)とデニス・サファテ(64試合、7勝1敗37セーブ、防御率1.05)のふたりです。彼らがオープン戦から安定したピッチングを見せてくれたおかげで、早くから勝ちパターンを確立することができた。

 五十嵐は抑えるために何が必要かを探し、考え方やピッチングスタイルまで変えてきました。年を重ねると変化するのはなかなか難しいのですが、彼はそれを怖がらず挑戦した。進化しようとする向上心がいい方向に向かったような気がします。

 サファテに関しては、正直ここまでコントロールがいいピッチャーだとは思っていませんでした。150キロを超す球を常時投げられて、さらに落ちる球もある。それでいて自滅しないのですから、相手チームにとってはすごく厄介なピッチャーだったと思います。

 この他にも、1年目の森唯斗(58試合、4勝1敗20ホールド、防御率2.33)をはじめ、岡島秀樹さん(44試合、4勝4敗27ホールド、防御率2.11)や森福允彦(58試合、2勝1敗15ホールド、防御率3.02)の頑張りもありましたが、このふたりの活躍が大きかった。

 また攻撃陣は、パ・リーグ打撃10傑にソフトバンクの選手が何人も名を連ねるなど、数字だけを見れば十分かもしれません。だけど、僕も含めてファンの皆さんも物足りなさを感じていたのではないでしょうか。

 特に4番の李大浩(イ・デホ)は期待値も高かっただけに、打率.300、19本塁打、68打点という結果に「こんなはずじゃなかった」と思った人も多かったと思います。ただ、昨年のソフトバンクは4番を固定できずにBクラスという結果に終わりました。それが今年は李大浩が全試合で4番に座り、打線に核ができた。そういう意味では、数字的に物足りなさはありましたが、及第点の評価は与えられると思います。

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