ホークスOB・斉藤和巳が語る「3年ぶりVの立役者」

  • 田尻耕太郎●構成 text by Tajiri Kotaro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 ソフトバンクが延長10回の末、サヨナラでオリックスを下し3年ぶりの優勝を達成した。オールスター明けから順調に白星を重ね快調に首位を走っていたソフトバンクだったが、シーズン終盤にまさかの大失速。優勝は144試合目までもつれた。この激動のシーズンを昨年まで18年間ソフトバンクに在籍した斉藤和巳氏に振り返ってもらった。

チームを3年ぶりの優勝に導いた秋山幸二監督チームを3年ぶりの優勝に導いた秋山幸二監督

 本当に苦しいシーズンでした。その原因のひとつが先発投手陣です。攝津正(22試合、10勝8敗、防御率3.90)、中田賢一(25試合、11勝7敗、防御率4.34)、スタンリッジ(26試合、11勝8敗、防御率3.30)の3人がほぼ1年を通してローテーションを守り、それぞれ2ケタ勝利をマークしましたが、その一方で生え抜きの選手、特に若い投手が育っていないと感じました。オフに補強した中田とスタンリッジがいなかったらどうなっていたことか......。

 なかでも、物足りなさを感じたのが3年目の武田翔太(7試合、3勝3敗、防御率1.87)です。夏場に一軍に上がってきてオリックス戦で2勝するなど好投しましたが、彼が持っている能力の高さを考えれば、1年を通して先発ローテーションに入ってもらわなければいけないピッチャーです。武田をはじめとした若手たちが、攝津たちに危機感を与えるような投手になってもらわないことには、これから先、かなり厳しい現実が待っていると思います。

 そのエースの攝津ですが、今季10勝(8敗)するも、シーズン途中に右肩の不調を訴えるなど苦しみました。これまで蓄積した疲労、今年32歳という年齢、相手打者の研究など、苦しんだ理由はいろいろ考えられます。攝津本来の安定感あるピッチングを最後まで見ることができませんでした。ただ、そんな状態でありながらも最低限の結果を残したのはさすがだと思います。この悔しさをクライマックス・シリーズ以降の戦いで晴らしてほしいですね。

 エースが苦しむ中、後半戦からローテーションに入った飯田優也(12試合、2勝5敗、防御率3.24)、大隣憲司(9試合、3勝1敗、防御率1.64)は周りの投手にいい刺激を与えてくれました。育成出身の飯田はマウンド度胸が素晴らしい。これはピッチャーとして大事なことです。試合をしっかり作れる投手ですし、彼が加わったおかげで先発陣もリリーフ陣も随分、楽になったと思います。

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