女房役・小田幸平が語る「山本昌、最年長勝利記録の真実」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 ゴメスに対する6球目、山本昌のカーブは、小田の構えた低めではなく、高めに浮いてしまった。しかし、浮き過ぎたせいで逆に高めいっぱい、ボール気味のカーブになり、打ちに出たゴメスの体も一瞬、浮いてしまう。バットがボールの下をこすって、打球は力なくセンターの前に上がった。結局、ゴメスをセンターフライに打ち取って、山本昌はこの試合、2度目のピンチを無失点で切り抜けた。ベンチに戻った山本昌は、聞こえよがしにこう言ったのだという。

「コイツ、ホントにサイン変えないんだよ」

 すかさず小田がこう返す。

「いやいや、抑えてるんだからいいでしょ、先輩」

 じつはこの場面、山本昌のカーブが高めに浮いたのは、小田の想定内だった。

「だって、あそこで昌さんが低めに放るわけないんですよ。フルカウントですから、ストライクを取りたいに決まってる。なのに低めいっぱいを狙ったら、いい球過ぎて、フォアボールになるリスクがあるんです。だから、低くは来ない。でも昌さんの今日の調子なら、高めに来ても打ち取れる。そういう保険を自分なりにかけてのカーブなんです」

 山本昌は5回をゼロに抑えた。そしてドラゴンズは4回裏、藤井淳志のタイムリーで2点を先制し、その後も投打が噛み合って、6-0の快勝。山本昌は、浜崎真二(阪急)が持っていた48歳10か月での最年長勝利の記録を64年ぶりに更新したのである。初回、ゴメスから奪った見逃し三振もまた、最年長奪三振の記録だった。小田がこう続けた。

「昌さんって試合中、バテるからって水飲まないんですよ。昔の人だから、水飲んじゃいけないと思ってるんですかね(笑)。いっつも氷を噛んでるんです。で、試合が終わるとコーラ。あの日もそうでした。250ミリの缶入りコーラを2本、2口ずつで一気に飲む。『水分摂ってないんだよ、摂らせてくれよ』とか言いながら、ガーッ、ガーッて、2本続けて飲んじゃう。思わず『それ、炭酸入ってるんですよね』ってツッコミたくなる飲みっぷりです。そんなおもろい昌さんだから、縁の下の力持ちでいたくなるんですよ。次の日、新聞を見ても、家族が支えてくれたって書いてあるのに、僕の名前、一個も出てきーへん。でも、そんなこと、気にしません。一応、オレもゲームで昌さんのこと、支えてたんやけど……なーんて、一個も思いませんね(笑)」

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