2014.09.22

女房役・小田幸平が語る「山本昌、最年長勝利記録の真実」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 マウンドに山本昌が上がる――その風景をキャッチャーの位置からずっと見続けてきたのが、ドラゴンズの小田幸平だ。

「昌さんって、とにかく大きいんです。すべてが大きい。身長もそうだし、投げたボールも大きく見える。体全体を使って放ってるからなのかもしれないけど、130キロ台の真っすぐがグワーッと大きく見えるんですよ。アニメで言うなら足を上げた瞬間、炎がボワーッと燃え上がる感じ。オーラもすごいし、これまでにやってきたことが昌さんの中に積み重なっているから、何もかもが大きく見えるのかもしれませんね」

9月5日の阪神戦で勝利した山本昌は最年長勝利記録を64年ぶりに塗り替えた

 小田は、谷繁元信という球史に残る名捕手が君臨しているドラゴンズにあって、貴重な二番手として存在感を示してきた。とりわけ山本昌が投げる試合では小田がマスクをかぶることが多く(最近5年間では38試合中23試合)、今シーズンも山本昌が先発した2試合は、いずれも小田がキャッチャーとしてスタメンにその名を連ねている。

「ドラゴンズに入ってきたときから、昌さんに『幸平、キャッチング上手いね』って言ってもらったんです。ジャイアンツのときは桑田(真澄)さんにも同じことを言われたことがあったので、オレ、キャッチングには自信持っていいのかな、と思えたんです」

 2014年9月5日のナゴヤドーム、ドラゴンズとタイガースの一戦。

 予告先発は、49歳になった山本昌――これが今シーズンの初登板だった。49歳と25日での先発は、それだけで『出場』『先発』『登板』のプロ野球記録を更新することになる。小田は試合の前日から、かつてない高ぶりを感じていた。小田はこう言った。

「確かにいつもとは違いました。昌さんとはいつも組ませてもらってきましたけど、あの日は、すごい記録ばかりでしたからね。緊張とは違うんですけど、ふと我に返ったとき、『これ、絶対に勝たなアカン試合じゃん、5回までは何が何でも放ってもらわないと……』と思ったら、いつもは2回見る相手打線のビデオを、5回見ちゃいました。タイガースが左ピッチャーをどういうふうに打っているのかを見たかったんですけど、そういえばドームに着いてからも見ましたね。だから、6回か(笑)」

 高ぶっていたのは小田だけではない。この日は、山本昌もいつもと様子が違っていたのだという。

「昌さん、最初はけっこういろんなことをしゃべってましたけど、時間が経つごとに口数が少なくなってきて、そのうち、ロッカーの真ん中に置いてあるでっかいソファーの周りをぐるぐる周り出すんです。まるで犬みたいで、見ているだけでおもしろい(笑)」