最年長登板記録へ。
元同僚・山﨑武司から山本昌へのエール (2ページ目)
とはいえ、この年齢まで現役を続けるとは思わなかったですね。だって、昌さんのボールを見て、一度も凄いと思ったことがないんですから(笑)。若い時に150キロの球を投げていれば凄いなと思ったかもしれませんが、昔からピッチングスタイルがまったく変わっていない。球速はずっと130キロちょっとだし、スクリューボールというウイニングショットがありますが、まったく手が出ない球ではない。もちろん、絶対にコースを間違えない素晴らしいコントロールはありますが......。だけど、同じスタイルを20年も30年も続けていることが、実はとんでもないことなんです。
歳をとれば、球も遅くなるだろうし、思うような球を投げられなくなるもの。そこを経験で埋めていくものなんだけど、限界がある。心と体の溝を埋めることができずにみんな引退を決意するんだろうけど、昌さんはまだ心と体をコントロールできている。日々のトレーニングの積み重ねもそうだし、野球を続けたい、マウンドに立ちたいという気持ちを誰よりも強く持っているからでしょうね。
とにかく、昌さんは究極の負けず嫌い。おそらく、球界トップだと思いますよ。だからこそ、対戦した時は「絶対に打ってやろう」と気合いが入るんです。そりゃ、若いピッチャーの150キロの球を打った方が気持ちはいいですよ。でも、昌さんから打つと「よっしゃ!」となるわけですよ(笑)。打ち取られたら、試合後に何を言われるのかわからないですからね。それが嫌というのもあって、昌さんには絶対に負けられないと思っていました。対戦して、心から楽しいと思える投手はそういません。僕にとって、昌さんはそういう数少ないピッチャーのひとりでしたね。
そして何より、昌さんのいちばんの凄さは諦めないことです。絶対に試合を捨てない。ピッチャーの中には、序盤に4~5点取られると、「次の登板で頑張ろう」と試合を捨てる投手が結構多いんです。それも、エースと呼ばれているピッチャーに多い。でも昌さんは、一度マウンドに上がると交代を命じられるまで絶対に試合を捨てない。その気迫は凄いものがあります。そういう姿を野手は見ているから、昌さんのために逆転しようとなるんです。ここまで218勝を挙げていますが、そのうち十数試合はそういうゲームをものにしてきました。そういうあきらめない気持ちというのは、真似をしようとしてもなかなかできることじゃありません。
今年はここまで来るのに時間はかかったけど、ようやく一軍のマウンドに上がるわけだから、思う存分楽しんでほしいですね。もちろん、ここがゴールじゃないし、来年の布石になるようなピッチングを残りのシーズンで見せてもらいたいですね。
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