160キロは天性の才能。大谷翔平の時代が到来した

  • 島村誠也●構成 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘、甲斐啓二郎●写真 photo by Koike Yoshihiro、Kai Keijiro

吉井理人×石井貴 対談(1)

 プロ野球も後半戦に入り、ペナントレース争いも熾烈さを増している。パ・リーグは昨年の覇者・楽天が最下位と苦戦しており、田中将大(現・ヤンキース)の抜けた穴の大きさを痛感させられている。一方、セ・リーグは昨年活躍した菅野智之(巨人)や藤浪晋太郎(阪神)が2年目のジンクスを感じさせない活躍を見せ、DeNAの井納翔一も大きな飛躍を遂げている。かつて投手コーチ経験のある吉井理人氏、石井貴氏にここまでのシーズンを振り返ってもらい、注目する投手について語ってもらった。

8月8日現在、9勝2敗、防御率2.17の成績を残しているプロ2年目の大谷翔平。8月8日現在、9勝2敗、防御率2.17の成績を残しているプロ2年目の大谷翔平。

―― 今シーズン、開幕前に注目していたピッチャーをそれぞれ挙げてください。

吉井 僕が注目していたのは、金子千尋、平野佳寿(ともにオリックス)、そして宮西尚生(日本ハム)の3人です。彼らは今年、FA権を取得すると思うのですが、ケガなどで長期離脱すれば権利を得られなかったはずです。だから、コンディションを考えながら、パフォーマンスを上げていかなくてはいけない。金子は登板を1回飛ばしましたが、平野と宮西はあれだけ登板しながらもコンディションを整えています。すごく頑張っていると思いますね。

石井 僕は西武からロッテにFA移籍した涌井秀章に注目していました。昨年はコーチとして彼のピッチングを見ていたのですが、10~20球であれば力のある素晴らしいボールを投げていました。ただ、これが先発で長いイニングを投げるとなると持たないんですよね。本人はリリーフでなく先発にこだわりがあったからロッテに移籍したと思うのですが......。僕には『新しい涌井を見せたい』と言っていましたが、ここまでは苦しいピッチングが続いています。まだ、戦力になりきれていないのがちょっと心配です。

吉井 少なからず年齢も関係していると思います。涌井は現在28歳と決して老け込む年齢ではありませんが、若い頃の自分の投球に戻ろうとして無理が生じてきています。"ニュー涌井"になるには、少し時間がかかる気がしますね。

石井 昔に比べて、全体的に体力は落ちてきますからね。そういう中で、涌井は若くて勢いのあった頃のイメージのまま投げているような気がします。まだスピードもありますし、変化球も悪くないのですが、以前は空振りを取れていた球をファールにされたり、打たれたりしている。おそらく「何で打たれるのかな」と思いながら投げていると思うので、気持ちの部分でも余裕がなくなっているのかもしれない。その涌井が抜けた西武投手陣の中では、岸孝之が頑張っています。彼は先頭に立つような性格じゃないのですが、今年は意識的に変えたのか、投手陣を引っ張っています。そうした自覚がボールに勢いをもたらしたのでしょう。5月にはノーヒット・ノーランを達成しました。

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