戦力外から球宴へ。
楽天・福山博之の奇想天外すぎる野球人生 (4ページ目)
わずか1年のうちに、戦力外から日本一へ。大学時代からの破天荒ぶりを考えると、サブらしいとも言える。そんな1年をサブは振り返る。
「この年は日本一にはなったけど、ピッチング的には不満も残るシーズンだった。でも、あれは7月(26日)のロッテ戦だったかな。田中(将大)が投げた試合でチームがサヨナラ勝ちした試合。あの試合の9回、ブルペンからベンチに戻って、野手の中に入って応援してたんよ。そしたら、目の前でサヨナラ勝ち。あの時のベンチの雰囲気は本当に鳥肌が立った。その時、『あぁ、ピッチャー続けて、このチームに入れて良かったな』って心から思った。そして『オレもこんな試合で投げてみたい』って強く思うようになった」
CS、日本シリーズともにベンチに入りながらも、一度も登板することはなかった。祝福ムードの中、素直に喜ぶことのできないサブは、オフの間から来シーズンに向けた肉体改造に着手する。
「オレもあの舞台で投げたい。その前にまずは1年間通して一軍で投げる。そのためには好不調の波をなくす。まずは体重を増やすことから始めた。1日6食。朝からとにかく食いまくった。原動力は(CS、日本シリーズで)投げられなかった悔しさがすべて」
優勝メンバーに入れた喜びなど微塵もない。そんなことより、投げることのできなかった悔しさが、サブの心を支配していた。
オフの間に体重を増やす選手は多い。しかし、体重を増やすことの弊害ももちろんある。体重が増えれば、投げる時にかかる関節への衝撃は強くなる。体は短い周期で重くなるが、関節は短い周期で強くならない。投手の場合、練習を含め年間に何万球という数の球を投げなければならない。そのため、無理な増量はかえってケガのリスクを高めてしまう。サブは、このことを計算に入れながら体重を増やしていったようだ。
「オフの間、練習の時間以外もずっと5キロのおもりのついたベストを着て生活していた。重くなるであろう体に、慣れるために。1月の自主トレの最後の方は、そのベストを着たままバレーボールとかもしていた。重い体を自由に動かすことに関しては、かなり慣れたと思う」
悔しさから始まった今季への準備。それは決して思いつきではなく、確実に先を見据え具体的に落とし込んだ練習だった。今季の大活躍の裏には、こうした地道な努力が隠されていたのだ。そうして迎えた2月のキャンプ初日。サブは自分の体の異変を感じとった。
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