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貯金はたった5つ。開幕ダッシュに失敗した巨人の誤算 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 さらに、チームの精神的支柱である阿部慎之助の不振。4月5日の中日戦で左ふくらはぎに死球を受け途中交代。その後、数試合を欠場するなど症状は軽くない。死球の影響なのか、バットも湿りがちでここまで打率.208、本塁打4。打点にいたっては20試合に出場して6しかない。4月25日から行なわれた広島との3連戦でも11打数2安打と振るわず、いつになったら「最高で~す」の雄叫びを聞けるのか、ファンはやきもきしている。

 それだけではない。内海哲也、杉内俊哉の両左腕が大ブレーキ。ふたり合わせてまだ1勝しか挙げていないのである。内海に関しては、巨人の球団関係者が、「いつも明るい内海が、今年はおとなしい。開幕を菅野(智之)に奪われたのは相当悔しかったと思うよ」と語るように、まだ開幕のショックを引きずっている可能性もある。

 そんな青色吐息の巨人をかろうじて支えてきたのが、新戦力や若手たちだ。新外国人のレスリー・アンダーソンは、キャンプ中は守備の不安を指摘され、バッティングも「?」がついて回ったが、シーズンが始まるや大爆発。常に打率は3割を超え、4月26日の広島戦では巨人軍の第79代4番打者に指名された。

 また、阿部の穴を埋めたのが、新人の小林誠司。開幕前、解説者の槙原寛己氏に「巨人に不安があるとすればどこか?」と聞くと、「阿部が離脱した時」と答えた。阿部がいなくなると、チームが機能しなくなるという指摘は、ここ数年ずっとあったが、死球により戦線離脱した時、ルーキーの小林は阿部が抜けた穴を見事に埋めたのだ。その活躍ぶりは、「阿部のデビューの時よりも堂々としていた」と原監督が絶賛したほどだった。

 そして開幕投手に指名された2年目の菅野智之も、ここまで5試合に先発して4勝0敗、防御率1.40の快投を演じ、エースと呼ぶに相応しい活躍でチームを救った。

 彼らの活躍がなかったら......いや、ちょっと待て。先発二枚看板が勝てず、リリーフ陣は総崩れ、主砲までもが不振。普通のチームのチームだったらBクラスはおろか、最下位だって不思議じゃない。なのに、こんな状態でありながらも5つも貯金を作っていること自体が驚異、いや脅威である。つまり、貯金は「たった5つ」ではなく、「5つも」なのだ。

 たとえ、今のチーム状態が続いたとしても1カ月に5つぐらいの貯金は作ってしまうチームなのだ(単純計算でいくと6カ月で貯金30)。そのうえ、この先、間違いなくリリーフ陣は整備され、実績のある阿部だって復調してくるに違いない。内海や杉内にしてもしかりだ。はたして彼らが従来通りの実力を発揮すればどうなるか。貯金5どころで済まないことは、火を見るよりも明らかである。

「何とか独走だけは......」。そう願う他球団のファンのためにも、まだ巨人が"普通のチーム"でいてくれているうちに、何としても叩いておかなければならない。今年の巨人は解説者たちの想像をはるかに超える強さを持っているのだから。

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