2014.03.08

前田健太も練習中。今、エースたちの間で「スプリット」が大ブーム

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

 日本時間3月2日のオープン戦でのメジャー初登板に続き、7日には初先発を果たした田中将大(ヤンキース)。ここまで順調な仕上がりを見せているが、田中の球を受けた正捕手のブライアン・マッキャンはこんなことを言っていた。

「スプリットは凄い。まるでテーブルから落ちてくるようだ」

スプリットの習得に励む広島のエース・前田健太。

 今季、アトランタ・ブレーブスから移籍してきたメジャーを代表する名捕手を唸(うな)らせたスプリット。田中がスプリットを習得しようとしたきっかけは、2010年に発刊されたある雑誌の「変化球特集」。そこに記載されていた、当時ソフトバンクのブライアン・ファルケンボーグ(現・楽天)の握りを見て、取り組むことを決意したという。以後、スプリットはウイニングショットとなり、昨年達成した24連勝を支えるなど、今や田中の代名詞となった。

 その田中が海を渡った今、スプリットをめぐり話題となっているのが前田健太(広島)だ。名実ともに日本を代表するエースとなった前田が、プロ8年目を迎える今季、新たな武器として取り組んでいるのがスプリットだ。前田曰く、「プロ1、2年目も投げていたけど、あまり精度が高くなかったので、それ以来、投げなくなっていた」ということだが、再びスプリットを習得しようとしたのはなぜか? 昨年まで中日、楽天などで27年間プレイした評論家の山﨑武司氏は次のように語る。

「打者って、タテの変化がすごく嫌なんですよ。そもそも人間の目はヨコの動きよりもタテの動きに弱い。だからこそピッチャーとしてみれば、フォークやスプリットのような落ちる系の球を手に入れたい。使えるものなら、どんどん使いたいはずです」

 そして山﨑氏は、田中が参考にしたというファルケンボーグのスプリットと、田中のスプリットの違いを次のように解説する。

「確かにファルケンの落ちる球は威力があります。僕が対戦していた頃は、真っすぐと落ちる球の2種類だけで十分でした。ただ、ファルケンボーグの落ちる系の球はスプリットしかなかった。一方の田中は、ズドンと落ちるフォークと、それより球速があるスプリットの2種類を投げるので、打者としては読みづらいです」