楽天スカウトが語る「松井裕樹が背番号1に込めた思い」

  • 中里浩章●文 text by Nakasato Hiroaki
  • photo by Nikkan sports

 楽天・立花陽三球団社長がガッツポーズを見せた瞬間、会場からは大きな歓声が上がった――。

 日本中のファンや関係者の注目を集めた、高校ナンバーワン左腕・松井裕樹(桐光学園高)のドラフト指名。やはり複数の5球団が1位指名で競合し、日本ハム、横浜DeNA、ソフトバンク、中日と順番にクジを引いていく。交渉権を引き当てたのは、最後に残った楽天だった。

楽天の新入団発表会で背番号1を披露した松井裕樹楽天の新入団発表会で背番号1を披露した松井裕樹

「不思議な縁があったんじゃないかなと思っています」

 そう語るのは、松井を追い続けた楽天スカウトの後関昌彦(ごせき・まさひこ)氏だ。

 かつてヤクルトで7年間、移籍した近鉄でも4年間プレイ。おもに左の代打として通算164試合に出場した。引退後はスカウトに転身し、近鉄、楽天で活躍。じつはもともと後関氏は、松井を担当していたわけではなかった。

「神奈川にいい投手がいるという話はしていましたが、私はそもそも担当外。しかし昨夏、甲子園でたまたま今治西戦を見ていた。中盤に差し掛かると他球団のスカウトは帰り始めたのですが、私は安部井(寛)スカウト部長らと何となく『もうちょっとだけ残りましょうか』となったんです。そうしたら1試合22奪三振の新記録。『こりゃ来年が大変だ』って話したんですけど、まさか直接関わることになるとは思いませんでした」

 昨年12月、スカウト部内の配置転換によって、後関氏は神奈川を担当することが決まった。"桐光の松井"と言えば、どの球団も注目する素材。当然、楽天でも上位指名候補としてリストアップされていた。

 そして年が明けた1月5日。桐光学園の初練習に際し、後関氏がグラウンドへ向かうと、他球団の関係者はまだ誰も来ていなかった。なんと2013年の一番乗り。もともと面識のあった桐光学園高の野呂雅之監督からも、「最初に来ちゃいましたね」と声を掛けられた。いま思えば、この頃から見えない糸で結ばれていたのかもしれない。

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