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松井裕樹が超一流の投手になるための3カ条 (2ページ目)

  • 小内慎司●写真 photo by Kouchi Shinji

 楽天首脳陣がこれから松井投手をどう育てていくかは、どんな状態でキャンプを迎えられるかによって決まるでしょうね。ここで最も大事なことは、松井投手が一番いい時の状態にあるかということです。少なくとも、昨年夏に甲子園で投げていた時と同じような感覚があれば、紅白戦、オープン戦でどんどん投げさせればいいと思います。ピッチャーは実戦を経験することでピッチングを覚えますし、プロのバッターにも慣れてきます。

 ただし、高校野球を引退した後にあまりボールを触っていないのであれば、実戦は4月頃を目標にしてもいい。その場合、キャンプ期間中は、投げる体力といい時の感覚を取り戻すことに専念した方がいいと思います。ピッチングの感覚を取り戻していない状態で試合に投げさせると、体も技術も壊れる可能性があるからです。

 僕は箕島高校時代の1983年にドラフト2位で近鉄に指名されました。高校野球を引退した直後は、大学のセレクションなどもあってボールに触れる機会はあったのですが、9月以降はまったくなし。当時バンドに夢中で、ギターばかり弾いていたんです(苦笑)。

 久しぶりにボールを投げたのは、1月の自主トレ。その時に「あれ?」という感覚を抱きました。投げ方がまったくわからなくなっていたんです。そんな状態のままキャンプに入ってしまい、おまけに先輩たちが僕の真横でバンバン投げている。それにつられて投げていると、いつの間にかフォームを崩して、ノーコンになってしまったんです。コントロールにはそれなりの自信があったので、ショックでした。感覚が戻っていないのに力を入れて投げてしまったことで、フォームを崩し、コントロールもめちゃくちゃになってしまったんです。

 それから二軍の試合に何度か投げましたが、1イニングに5個も6個も四球を出して、KOされる試合が続きました。当時の二軍監督に「『能ある鷹は爪を隠す』って言うけど、オマエは隠しっぱなしやないか!」って嫌味を言われて......(苦笑)。結局、いい時の感覚を取り戻すまで、1年半くらいかかりました。

 自分の体験から学んだことは、オフの間もボールを触るということです。1998年にメジャーに行く少し前から、オフシーズンでもボールを投げるようにしました。ピッチングではなく、キャッチボールや軽い遠投です。そうしたら、キャンプでの仕上がりがすごく順調になって、いい状態でシーズンを迎えることができました。と同時に、入団1年目に投げる感覚を忘れたのは、高校野球引退後にボールをまったく触らなかったからだと気付きました。

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