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セ・リーグ後半戦展望。「それでも3位はヤクルト」の根拠 (3ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nikkan sports

 調子のいい投手を闇雲に連投させて疲弊させる起用法はせずに、経験のない投手や不調の投手を我慢強く起用した。ドラフト1位ルーキーの石山泰稚をセットアッパーに抜擢し、ドラフト4位左腕の江村将也や2年目の木谷良平などの若手投手を育てながら戦力へと成長させていった。

 また、攻撃陣でも開幕から打撃不振に苦しんだキャプテンの田中浩康を7年ぶりに二軍降格させ、さらに主砲の畠山和洋も二軍で調整させた。その間に田中に代わって1番・セカンドで抜擢された高卒3年目の山田哲人が、「僕にとってはチャンスなんで、絶対にレギュラーを獲ります」と目の色を変えて試合に臨み、33試合で打率3割1厘と新風を吹き込んだ。そして、山田の台頭に触発された田中は、6月29日の巨人戦、7月7日の中日戦で勝負を決める一打を放つなど、存在感を発揮。さらに、開幕から故障で二軍暮らしが続いた川端慎吾も、ようやく7月に一軍に合流して攻撃陣の厚みは増した。

 前半戦を振り返った小川監督は「打線は機能しはじめている」と手応えを口にし、さらに「投手陣を何とか立て直さないといけない。最下位という現状は受け止めなければならないが、チャンスは十分にあると思う。諦めずに戦っていきたい」と、巻き返しを誓った。

 その言葉を受けて解説者の野村弘樹氏は、「5割復帰も十分にありえる」と見ている。現在17の負け越しを抱えるヤクルトだが、「昨年も8月は借金がかなりあって、9月以降に20勝11敗1分の成績を残して、しっかりと貯金を作った。終盤の粘りというか、スパートのかけ方を知っています」と、2年連続でクライマックスシリーズに進出した経験値を買う。昨シーズンのヤクルトは、8月24日の時点で借金8の4位、3位の広島に3.5ゲーム差をつけられていたが、そこから巻き返して3位の座を手中にした。野村氏は今季も後半戦での飛躍を狙うためには、「投手陣で言えば、小川泰弘に続くピッチャーがあとひとり出てきてほしい。館山がいないのは本当に痛いけど、石川(雅規)、村中(恭平)、八木(亮裕)あたりが頑張ってくれれば」と期待をかける。

 予期せぬ故障者続出のために早々に優勝争いから脱落し、前半戦は苦しい戦いが続いたが、勝負どころのラスト・スパートに向けて、遅まきながらようやく戦力は整ってきた。最下位に沈むヤクルトの逆襲のシーズンは、これからスタートを切る。

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