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巨人・菅野智之にあって、澤村拓一にないもの (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ダルビッシュ有(現レンジャーズ)もそうだったのですが、ただ打者を抑えるのではなく、どのようにして打ち取るかを計算しながら投げている印象を受けます。150キロを超すストレートがありながらも、それに頼っていない。非常にクレバーなピッチャーだと思います。これまで何年もプロで活躍しているピッチャーを見ているようで、とてもルーキーのピッチングとは思えないですね。

 その菅野投手とは対照的に苦しいピッチングが続いているのが澤村拓一投手です。いちばんの原因はコントロールです。菅野投手とは違って、ピンポイントで投げる正確さがない。確かに、澤村投手のストレートは速いし、力強さもある。ストライクゾーンで勝負するんだという意志が伝わりますし、それ自体は決して悪いことだとは思いません。ただ、勝つためにはそのピッチングではダメだということです。

 コントロールの悪いピッチャーでも、最低限インコースかアウトコースかの投げ分けはするのですが、澤村投手はそれさえできていない時があります。昨年の日本シリーズで日本ハムは彼に抑えられましたが、あの時はコントロールが想像以上にアバウトだったからなんです。どこに来るのかまったく予想できず、最後まで的を絞ることができなかった。ただ、あれは短期決戦だったからよかったと思うのですが、シーズンを通してだとあのピッチングでは通用しない。2年間通算して21勝21敗と、貯金を作れていないことがそれを証明しています。

 今の澤村投手に必要なことは、とにかく意識を変えることだと思います。相手をねじ伏せたい気持ちはわかるんですが、ただ力任せではいけない。同じ150キロの球でも、使い方が違えば結果も変わってきます。150キロを生かすためには、どこにどんな球を投げれば最も効果的なのか。そうしたことを考えるだけでもまったく違った結果が出ると思いますよ。

 そして澤村投手のもうひとつの問題点が、体の使い方なんです。ウエイトトレーニングにも熱心と聞きますし、そこに関しては意識の高さを感じます。あの太腿を見ればわかるように、相当鍛え上げていますし、下半身の強さを感じます。ただ、澤村投手のフォームを見ていると、下半身の力が指先までうまく伝わっていない。言ってみれば、上半身だけで投げているんです。だから、スピンが効かないし、打者の手元で伸びてこない。スピードのわりに空振りが奪えないのも、そこだと思います。あれだけの体の強さがあるのに、もったいないですよね。逆に言えば、あの投げ方で150キロを超せるわけですから、素質は素晴らしいものを持っているんです。ほんとちょっとしたことがきっかけで、とんでもない投手に化ける可能性を澤村投手は秘めていると思います。

 いずれにしても、菅野投手の入団は澤村投手にとって大きな刺激になったと思うんです。澤村投手に持っていないものを菅野投手は持っているだろうし、逆に菅野投手にないものを澤村投手は持っている。身近にライバルがいることはいいことだと思いますし、お互い巨人のエースになれる力を持っている。これから切磋琢磨しながら、ともに成長してほしいですね。

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