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【WBC】
侍ジャパン、決勝トーナメントに王手も見えてこない「必勝の形」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 その言葉通り、田中の好投がチームに勢いをもたらし、8回表、日本は同点に追いついた。おそらくこの時、田中は自分の役目は終わったと思ったのではないか。試合翌日、与田剛投手コーチは次のように語った。

「私も経験があるのですが、ビハインドの場面でマウンドに上がって、チームが同点、もしくは逆転すると、そこで一回気持ちが切れてしまう。昨日の田中にしても、8回のマウンドは同点になった後だったし、阿部(慎之助)に代走を送ったのでキャッチャーが相川(亮二)に代わった。ふたつの状況が変わってしまったために、非常に難しいマウンドになってしまった」

 確かに、この日の田中の出来からすると、続投させたい気持ちもわからないわけではない。しかし、点を取られすぐに交代させるのであれば、なぜこの回の頭からピッチャーを代えなかったのか。これまでなかなか結果が出なかった田中にしてみれば、2回を完璧に抑えたところで交代していえば次に弾みがつくだろうし、チームにとっても今後の大きな武器となったに違いない。山田氏はこうも語っていた。

「点を取られてマウンドを下りると、次の登板が不安になってしまう。気持ちよくマウンドを降ろしてあげるのも首脳陣の仕事なんです」

 能見、攝津、田中......。いい形でマウンドを降りられなかった投手が、試合をするごとに増えている点が気がかりだ。

 また、牧田和久のアクシデントもあって、人生初のリリーフを任された杉内俊哉も試合後にこう語っていた。

「ブルペンに入ったのは(試合開始直後の)2回ぐらいからです。結局、3度は(肩を)作ったと思います。抑えの人の大変さがわかりました」

 想定外の登板だったとはいえ、なぜ2回からブルペンに入り、3度も肩を作らなければいけなかったのか。ベンチからはどういう状況になればマウンドに行くという説明はなかったという。言うまでもなく、田中も杉内も本職は先発である。たまたま抑えてくれたからよかったものの、あくまでも結果オーライに過ぎない。

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