【WBC】
「誤算」が生んだ「一体感」。3連覇へ、ようやく道は開けた!

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

鳥谷敬の先頭打者ホームランを含む6本塁打、16得点を奪った日本鳥谷敬の先頭打者ホームランを含む6本塁打、16得点を奪った日本 昨年サッカー日本代表の本田圭佑は、決定力に欠いた自身のプレイに関し、「ゴールはケチャップのようなもの」というサッカー界に伝わる言葉を引用して表現した。ボトルに入ったケチャップは、出ない時はまったく出ないが、出る時はトバドバと出るもの。サッカーのゴールとはそういうものだ、と。

 それに近い展開が、野球の第3回WBCの決勝ラウンド進出をかけたオランダ戦で起こった。これまでのつながらない日本打線がウソのようにつながり、大会を通じて1本もなかった本塁打が6本も飛び出した。結果、16-4と7回コールドで圧勝した。

「(延長10回の激闘を制した)一昨日の台湾戦の勝利で、神様がご褒美をくれたんですかね」

 その言葉通り、2連覇中の日本代表を率いる山本監督にとってアメリカラウンド進出は、野球の神にすがってでも達成したい最低限の目標だったのだろう。

 大会前、3連覇に挑む侍ジャパンにとって大きな誤算は、簡単に得点を許してしまう田中将大の不調と前田健太が抱える右肩の不安だった。1次ラウンド初戦(ブラジル戦)に先発した田中がわずか2回1失点で降板の事態となると、投手を総動員して薄氷の勝利を手にした。ひとりが崩れれば次にマウンドに上がる人間がカバーする。打線よりまず先に、投手の「つながり」が生まれて1勝を手にした。続く格下の中国戦は前田が変化球を中心に不安を一掃する快投をみせた。

 オランダ戦でも5回無失点(被安打1)に抑えた前田は、これまでの強気の発言を繰り返してきた裏に、大きな不安があったことを吐露した。

「中国戦ではまだストレートもスライダーも納得のいくボールが投げられず甘いボールも多かったけど、もう大丈夫です。今日は自分の中でも確信がある」

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