【WBC】
「誤算」が生んだ「一体感」。3連覇へ、ようやく道は開けた! (2ページ目)
一方の打線に関しては、1次ラウンドを終えて1番打者と2番打者が定まらないことが、打線につながりを欠く最大の要因だった。しかしそれも、2次ラウンド初戦の台湾戦から井端弘和が2番に座り、貴重な同点打を放つなど決勝ラウンド進出の立役者となったことで解決した。
最後に残った懸念材料の1番には、選球眼のいい鳥谷敬をオランダ戦から起用。鳥谷も先頭打者ホームランという最高の形で応えた。8日の台湾戦で1点ビハインドの9回二死から二盗を決め、日本に流れを呼び込んだ鳥谷。こういったツキのある選手を起用するのも短期決戦を戦い抜く上では定石だ。オランダ戦の後、山本監督はこう賛辞を送った。
「鳥谷の初ヒット(先頭打者ホームラン)は一昨日のスチールから始まっているんじゃないかという気がしますし、各選手がひとつになって、チームとして機能して、この得点になったんじゃないかと思います。あのホームランは選手に勇気を与えてくれた」
侍ジャパンは、試合を重ねるごとに不安材料がひとつ消え、ふたつ消え、決勝ラウンドを前にラインアップが固まったのだから、これ以上ない展開ともいえる。
アメリカラウンドに向けて、あえて残された問題を挙げるとすれば、準決勝の先発が予想される前田とともに、もうひとりの先発を誰に託すかだろう。台湾戦に先発した能見篤史か、それとも2度の中継ぎ登板で落差の大きいスプリットで活路を見出した田中か。田中はオランダ戦の翌日、同級生である前田のピッチングを振り返った。
「完璧でしたね。あのピッチングを見て刺激を受けないわけがない。とにかくアメリカにたどり着くことができて良かった。自分自身、まだ結果は出ていないけど、状態は上がっている。できる準備をしてしっかりと臨みたい」
前田とともに期待されていたもうひとりの柱である田中の復調も、首脳陣に大きな自信を与えた。そして指揮官は力強くこう宣言した。
「アメリカでは頂点を狙っていきたい」
メジャー組の不参加、抑えに予定していた浅尾拓也の故障、先発の柱と考えていた田中と前田の不調。さらに大会が始まればオーダーが固定できず、打線がつながらなかった。誤算は続いたが、それでも苦しい試合を制していく中で、「一体感」という最大の力を手にした。チーム最年長の稲葉篤紀は言う。
「台湾、オランダと戦って、ようやくチームはひとつになったと思う。あとは目の前の試合に集中するだけ」
オランダと12日に戦ったあと、侍ジャパンはいよいよアメリカの地を踏む。
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