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【プロ野球】11ゲーム差から逆転。西武に何が起きたのか? (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Nikkan sports

「中継ぎはいつ投げるかわからないポジションだけど、涌井が戻ってきてから、役割がわかりやすくなった。それが精神面でプラスになっている」

 6月5日に行なわれた中日戦の8回表。この日の長田はキレのあるストレートを投げていたにもかかわらず、トニ・ブランコに抜けたフォークをレフトスタンドまで運ばれた。試合後、渡辺監督は「いいボールを投げているのに、自分の球威を信じられないんだよね」と精神面のモロさを指摘。だが、涌井の復帰で長田が8回に固定されるようになると、ストレートを中心に攻め込む姿勢を取り戻し、7月以降の20試合でわずか1点しか奪われていない。

 一方、打線では、中島裕之がチームを牽引している。交流戦まで打率.287と苦しむも、シーズン途中にバットをやや寝かせる構えに変えたことで、ヒットを量産するようになった。6月には打率.405をマークし、プロ入り12年目で初となる月間MVPを受賞すると、7月も打率.363と好調を維持。現在、リーグトップの打率.322と打ちまくっている。

「中島さんが引っ張ってくれている部分はあります。でも、若手も頑張っているんですよ」と語るのは、チームキャプテンの栗山巧だ。8月21日、死球で左尺骨骨折の負傷を負い、今季の復帰が難しくなったソフトバンク戦の前、栗山はこう話していた。

「僕や中島さん、おかわり(中村剛也)など、監督の計算として『やってもらわなければ困る』選手と、熊代(聖人)や秋山(翔吾)、浅村(栄斗)、(炭谷)銀仁朗といった若手がいい感じでミックスされている。特に若手の頑張りが、チームを勢いづけている」

『若獅子』の中でとりわけチームに勢いをもたらせているのが、2年目の秋山翔吾だ。昨季は打率.232と、バッティングに課題があったものの、シーズンオフにひたすらバットを振り込んだことで、今季は打率.298と主力打者に成長した。シーズン序盤は5番も任され、オールスター以降は2番に定着している。調子が下降する度に打撃フォームをチェックし、飛躍をアシストした土井正博ヘッドも目を細める活躍ぶりだ。

「今、一番いい2番バッターだと思う。普通の2番はバントで送ることが多いけど、秋山は3割近く打っているから強攻できるし、バントもできる。何をしてくるのか、相手はわかりにくいだろうね」

 残りシーズンは、約40試合。片岡易之は右手首痛で二軍調整中、中島が腰、中村も左ひざに不安要素を抱え、精神的支柱の栗山が戦線離脱となった。しかし、最下位に沈んだシーズン序盤から様々な困難を乗り越えたことで、「チームの底力は増している」と土井ヘッドは語る。

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