【MLB】「二刀流」本格稼働の大谷翔平が未踏の「サイ・ヤング賞」に辿り着く可能性とそのシナリオ (2ページ目)
【サイ・ヤング賞獲得への課題とポイント】
すでに触れたように、大谷は支配的な投球ができる投手である。一方で最大の課題は、それをシーズンを通して維持できるかどうかだ。フルシーズンを投げ、サイ・ヤング賞投票の対象となったのは、2022年のエンゼルス時代のみ。この年は28試合に先発し、166回で15勝9敗、防御率2.33、219奪三振、投票では4位に入った。
二刀流を続けながら、フルシーズンを投げきることは可能なのか。
「投げるスタミナは、投げることでしか身につかないと思っています。走ることやウエートトレーニングだけで得られるものではない。試合のレベルで継続していくなかで養われていく。そういう意味では、昨年の終盤はボリュームと強度を上げて投げることができたので、それを継続して今年も続けられればいい。そのなかで、まず健康を保つことが一番難しく、最も重要なことだと思っています。そこにかかっているのかなと思います」
昨季は6月16日の復帰戦で1イニングだけ投げ、その後少しずつイニングを増やしていった。8月27日には5回を投げて勝利投手となり、ポストシーズンでは4試合に先発して20回1/3で2勝1敗。二刀流でドジャースの世界一に大きく貢献した。
「2年前はDHだけでポストシーズンに出ましたが、去年は久々に二刀流のリズムに慣れることができた。投打を両立しながらあの緊迫したなかで試合をこなすのは、負担がかかると感じました。でも、すごくいい経験ができたと思います」
大きな焦点となるのは、シーズントータルで何イニングを投げられるかだ。大谷の最高の投球シーズン2022年は166回だった。その年、大谷を抑えてア・リーグでサイ・ヤング賞を受賞したのはヒューストン・アストロズのジャスティン・バーランダーで175回。近年、ほかに少ないイニングでサイ・ヤング賞を受賞した先発投手は、2021年のミルウォーキー・ブルワーズのコービン・バーンズの167回、2024年のアトランタ・ブレーブスのクリス・セールの177回2/3である。やはり170回前後は最低でも投げる必要がある。
サイ・ヤング賞に関する質問が相次ぐなかで、大谷は個人タイトルよりもチームの3連覇を優先すると明言した。
「イニングを重ねれば、そういった賞に近づくというのはそのとおりだと思いますけど、最初からそのためにプレーすることはないですし、無理に(登板間隔を)縮めて投げることもありません。例えば投手の数が減ったり、誰かがケガで離脱したりして、自分のイニングが増えることはあると思いますが、そこは臨機応変に対応できればと思います」
とはいえ、今の大谷はメジャー9年目でサイ・ヤング賞に最も近い位置にいる。2022年シーズンはよかったが、あれから4年、30代の今、より完成度の高い投手になっている。直球の平均球速は2022年の97.3マイル(156.6キロ)から、2025年には98.4マイル(158.3キロ)へと上昇した。さらに2022年はスイーパーへの依存度が高かったが、現在は他にスプリット、カーブ、スライダー、シンカー、カッターと、多彩な球種を自在に操れる。パワーヒッターがサイ・ヤング賞を狙うのは異常なことだが、大谷なら可能だとドジャースは信じているし、アメリカのメディアやファンも大きな期待を寄せているのである。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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