【MLB】山本由伸が絶対的エースと呼ばれるための課題は? キーワードは「ビッグイニング」と「中4日」 (3ページ目)
【エースはローテを守る責務がある】
シーズン後半戦、ふたりはどのような立場で臨むのか。まず、千賀はエースとして投げ続けることが求められる。
千賀は6月12日の登板で右太もも裏を負傷。一塁のベースカバーに入って高い送球をジャンプして捕った直後、痛みを訴えて降板した。その翌日からメッツは7連敗を喫し、地区首位の座をフィラデルフィア・フィリーズに明け渡し、地区2位で前半戦を終えることになった。
ケガの主な原因がこのプレーだったのかは不明だ。また、メッツが失速したのは千賀の離脱だけが要因とも言いきれないだろう。けれども、千賀の不在が大きかったのは間違いない。
前半戦のメッツ先発投手陣はリーグ2位の防御率3.38を記録した。しかし、台所事情は厳しい。タイラー・メギルは6月中旬に右ひじを痛め、復帰は早くても8月なかば以降。グリフィン・カニングは6月下旬に左アキレス腱の断裂に見舞われ、シーズンを終えた。
よって後半戦でローテーションの両輪を担うべきは、千賀とショーン・マネイアだろう。開幕前に故障者リストに入っていたマネイアは前半戦最後の試合で戻ってきた。2023年のエース(千賀)と2024年のエース(マネイア)が揃い踏みすれば、ワイルドカードにとどまらず地区優勝も狙える。
一方、今永の立場も千賀と似ている。カブスは地区首位で前半戦を折り返した。だが、6月17日の時点で6.5ゲーム差をつけていたミルウォーキー・ブルワーズに1ゲーム差まで詰め寄られている。
カブス先発陣の台所事情も厳しい。今永と両輪を形成する予定だったジャスティン・スティールは開幕早々に左ひじの手術を受け、ジェイムソン・タイヨンは7月初旬に右のふくらはぎを痛めた。しかも、カブスの先発投手陣の防御率はメッツほど低くない。リーグ8位の4.06だ。
とはいえ、ドジャースもメッツもカブスも、ポストシーズン進出圏内の位置から後半戦を迎える。山本と千賀と今永に求められるのは、いずれも「エースとして」の活躍だ。彼らがチームを牽引すれば、「ナ・リーグの地区優勝はこの3チーム」ということも大いにあり得る。
著者プロフィール
宇根夏樹 (うね・なつき)
ベースボール・ライター。1968年生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
【写真】大谷翔平フォトギャラリー SHOW TIME!
3 / 3