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桐朋高・森井翔太郎 偏差値71の二刀流はなぜ「異例のメジャー挑戦」を選んだのか? (2ページ目)

  • 内田勝治●文 text by Uchida Katsuharu

 武蔵府中リトルに在籍していた桐朋小時代。全国優勝のご褒美に、当時アストロズに在籍していた青木宣親さん(現・ヤクルトGM特別補佐)がチームを訪問し、野球教室を開催した。スイングを間近で見る機会に恵まれ、「やっぱり違うなと。自分もこういうところを目指したいなと思いました」と、メジャーに憧れを抱いたきっかけを明かした。

【危機的状況を救ってくれた『鬼滅の刃』】

 ただ、順風満帆な野球人生ではなかった。中学では練馬北シニアに入部するも、小6時に発症した腰椎分離症の影響もあり、硬式をプレーすることでかかる体の負担も考慮して、中1の夏休みから桐朋中の軟式野球部に入り直した。

 しかし、同年終わりから2年にかけてコロナ禍で大会が軒並み中止となったうえに、練習することもままならない日々が続き、腐りかけたことがある。

「何もやる気が起きず、YouTubeを見て過ごしたりしていました」

 そんな状況を救ってくれたのは、アニメや漫画で大人気の『鬼滅の刃』だった。主人公の竈門炭治郎が、鬼にされた妹の禰豆子を人間に戻すため、さまざまな困難に立ち向かう姿に勇気をもらった。

「主人公が頑張ってトレーニングをしている姿が自分自身に重なりました。このままではダメだと思って、素振りやシャドーピッチングを積極的にやるようになりました。今まで影響を受けたのは鬼滅の刃くらいです」

 憧れの作中最強キャラ・継国縁壱(つぎくに・よりいち)のように「どうせやるならトップを目指したい」という考えに至り、まずはケガをしない体づくりに専念。ヨガインストラクターの母・純子さんから勧められたヨガを取り入れたことで骨格の歪みが改善。強くてしなやかな肉体へと変化するとともに、中学入学時には154センチほどしかなかった身長も3年間で178センチまで伸びた。

 この頃から純子さんと野球ノートを兼ねた交換日記を交わすなかで、メジャーリーガーの夢が具現化してきた。当時の心境が事細かに綴られた9冊は、森井の宝物だ。

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